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「ちょっと!! そうやって呼ぶのやめてよ!」
私は声を張り上げ、周りを見渡した。
授業が終わって講義室にはもうは生徒が居ない。
ほっと安堵の息を漏らすと、
そらるくんは「へへ」と いつものクールさに似合わない笑顔を見せた。
「ごめん。つい、ね」
「ついじゃない。気をつけなさいって言ってるのに。」
「でもここには僕達以外居ないじゃん。結果オーライ。」
う……と怯むと、あざとく屈んでこちらを見つめてくるそらるくん。
私が1歩後ずさると、そらるくんは1歩近づいた。
「じゃ、じゃあ話戻そう」
私が後ずさりながらそう言うと、
そらるくんは余裕そうに笑ってから言った。
その表情は、男に免疫がない私を楽しんでいるに違いなかった。
「仕方ないな……で、Aちゃんはどんな見解?」
「…………。」
「あの殺人事件について、どんな見解?」
切り替えが早いこと。
そう思いながらそらるくんの方を見て、私は口を開く。
「うーん、あくまで私の見解。しろうと理論 (経験に基づいた主観) だけど」
「はい。」
「彼はもしかしたら、エグゼクティブストーカーの一種なんじゃないかな。」
「……えっと、」
エグゼクティブストーカーは、ストーカーの中でも厄介で
自分勝手な想像はもちろんだけど、
相手の性格などを自分の中で作り上げてしまう。
そして、そんな自分勝手な幻想と、現実が
1ミリでも違うなんて許さない。
そんな彼らは、主に被害者と対人的関係にあり、被害者は社会的地位のある人に多い。
「……確かに、それなら。」
そらるくんは納得したように手を叩いた。
「まぁ、私の話は所詮しろうと理論。主観で決めつけるのは良くないんだからね?」
いずれ報道されるだろうし、結果を待ちなさい。
私はそう言って、愛らしい彼のくるくるした髪の毛を撫でた。
そらるくんは猫のように目を細める。
「じゃ、時間だね。また。」
「……もう?」
「授業があるの。」
「そっかー。」
彼は悲しそうに眉を下げた。
………昔はこんな目なんてしなかった。
むしろ、感情なんてひとつも表さなかったこの子。
そんな子を、ここまで感情表現の出来る子にした。
心理学に知識があって、そばに居たのがたまたま私だったと言うだけ。
けれど、
雛が卵から出て最初に見たものを親と思うように、
彼は私に完全に懐いてしまったのだ。
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まふくん天使 - Twitterの名前教えて頂けませんでしょうか (2020年2月18日 23時) (レス) id: 9e28ad89d2 (このIDを非表示/違反報告)
るか(プロフ) - よく聞いて、男はみんな狼ですの後編を見させていただきたいのでパスワードを教えてください、! (2018年12月21日 18時) (レス) id: da69d00b85 (このIDを非表示/違反報告)
雪兎-ユキト-(プロフ) - タイトルに惹かれてきたのですが、すごく面白いです!更新頑張ってください、応援してます!! (2018年11月26日 22時) (レス) id: 0b875c6eec (このIDを非表示/違反報告)
音恋&五月雨(プロフ) - 面白いです!!更新頑張ってください(o^^o) (2018年11月26日 21時) (レス) id: 91db66459d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆんた | 作成日時:2018年11月11日 23時