6話 ページ8
フラりと足元から崩れ落ちるAを受け止め、荒い呼吸を確認してから姫抱きする。
剣術は確かだが無鉄砲で無計画なこいつは、妖術や毒を使う鬼に滅法弱い。
「だから先走るなと言ったのに。」
瞳を閉じながらぽろぽろと涙を流し続ける踊柱に文句を溢すが、意味はない。
泣くのはよせ、と体を包むようにして本部へ向かう。
出来るだけ早く連れて帰ろう。
好いた奴の苦しむ姿はあまり見たくないが、
流す涙は月明かりがぼんやりと霞ませて美しい。
なんて本人が聞いたらまた怒りそうなことを思いながら足を動かした。
『う…、冨、岡…さん』
少し飛ばしすぎて起きてしまったのか、潤んだ瞳が俺を捉える。
「起きてると面倒だから、寝ろ」
そう言って軽い体を抱き直し、木々を抜けていく。
Aはよく、夜の森は木が襲いかかってくるようで、月は俺をずっと見つめていると言っていた。
「怖いか」
と顔を前に向けたまま問うと、返事の代わりに首に腕を回される。
二人は何も言わなかった。
好いた人が自分を頼ってくれるのが、純粋に嬉しかったし、同時にとても苦しい。
なんだか何時もより大きく見える月が、そんな自分のことを見透かしているようで嫌な気持ちだ。
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作者名:papo | 作成日時:2019年9月10日 23時