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68*ーピンクのリップー ページ19
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―――それは、スローモーションのように。
出会ってから
にこやかな高地さんしか知らなかったから
こんな射抜かれるような瞳で見られたのは
初めてのことで…
長い指が私の顎を捉え
ゆっくりと塗られた、チェリーピンクのリップ。
高地さんが少し屈んだからか
彼の前髪が目にかかり顔に陰りを出して
…前髪の合間から見えるその瞳は
言いようのない特殊な色を放ったように見えた。
“――綺麗になった。――”
いつもより低い、高地さんの声…
……
――――――――――――
―――――
気づいたら笑顔でリップを返され
それまでの射抜くような瞳は姿を消していた。
ベンチに置いたままだった紙袋たちを持って
何事もなかったかのように歩き出した高地さん。
……夢か。いや、もし夢だとしてもこれは…
私は彼のイケナイものを見てしまったのでは…
―――私の顔はたぶん、いや…相当赤い。
―――――――――――――
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作者名：ゆづり | 作成日時：2020年10月17日 23時
