十 ページ10
『やはりここでしたか。』
JM「本当に見つけるのが早いね…でもまだ食べ始めたばかりだから待ってて。」
水刺間、王宮の厨房である。彼のおやつを作らされたであろう宮女に目配せをして逃がしてあげた。
『智旻様、そんな余裕はありません。今から走らないと間に合いません。』
JM「柾國は…先に向かわせたんでしょ?なら平気だよ。」
えぇ、柾國さんが先に行けばなんとかなるかもしれませんが毎回そういうわけにもいかない。
そろそろ彼の堪忍袋の緒が切れそうなのだ。
JM「…ねぇ、やっぱり男装やめようよ。」
やはり主は納得してくれていなかったのか。まぁ、今はそんな服装のことなどどうでもいい。
『やめません、あと5秒でそれを食べきらないと私が食べますよ。』
JM「わかったよ、はい。」
食べたいならそう言ってよ〜と主がのんびり立ち上がる。
違う、そうじゃない。本当に時間がないのだ。
JM「次は…なんだっけ?」
『領議政が智旻様に面会を希望されてます。』
JM「あぁ…今度はどんな面倒事を押し付ける気かな。」
領議政とは、簡単に言うとこの国で王族の次に権力を持っている人だ。
今の領議政は後宮で一番偉い妃の父親で、私が無断で薬を調合した方の親である。
彼は先帝の頃から仕える者で、玧其様と智旻様でも無碍にできないお方。
それだけ力があるお方だから、智旻様によくお願いと言って仕事を任せてくることがしばしばある。
『…落ち着いて話してくださいね。』
JM「あいつが何もしなきゃ落ち着いてるよ?Aのことを変な目で見たり、面倒な仕事押し付けてこなければね。」
『とにかく、早く行かないと柾國さんが大変なので!』
のんびり歩く主を引っ張りながら領議政がいる部屋まで急いで向かった。
「これはこれは…お忙しいのに時間を取らせて申し訳ありません、第二皇子様。」
JM「面倒な挨拶はいい、手短に要件だけ伝えて。」
始めから怪しい雰囲気…柾國さんと目を合わせてお互いに頷く。
JK「(本当にこの人は……)」
『(穏やかに終わりますように…)』
私達は彼らの話に耳を向け、静かに祈ることしかできなかった。
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作者名:くぅ | 作成日時:2023年11月19日 21時