3.お嬢様、不覚です。 ページ4
「何点だったの？紫原さん。」
「え……その……」
「オレは40点！まあギリギリセーフってとこかなぁ。」
今回は平均も低かったみたいだし、と東雲くんが顎で指し示した方を見やると、黒板に“Ave.48.6”の数字が。
「平均は48.6点だし、赤点じゃないから補習は免れた……はぁぁ……」
「それは、良かったね……」
私はただ、ほっと胸を撫で下ろす彼を困ったように見つめることしかできませんでした。
そして、ぐぅぅ、と下を向いて伸びをしていた彼が、突如むくりと起き上がって、目を見開いて立ち上がりなさいました。
「……え。紫原さん、100点……？」
一瞬何のことか分かりませんでしたが、点数を見えないように折って隠していた私の答案の折り目が戻って、点数が露になっていることに気づきました。
「あ、違っ……これは……」
彼のお世辞にも高いとは言えない点数を公開された後に、自分の満点の答案を隠した挙げ句に見せるというのは、彼にとって嫌味以外の何物でもありません。
困りましたわね……
また、嫌に思われてしまいます。
──本当は、貴女のことなんて───
「……っ！」
東雲くんの呟きに反応したクラスメイトがざわめきながら続々とこちらへ視線を向ける中で、私はぎゅっと目をつぶりました。
嫌味な奴だって、性格が悪いって、見下してるって思われてしまいます。
本当はそんなつもりは毛頭ありませんのに。
お父様の期待に応えなければならないだけですのに。
照れも喜びもせず、そのままじっとしていると、東雲くんから声をかけられました。
「すごいね、紫原さん。」
「え……？」
褒められた……んですの？
「今回は難しかったって先生も言ってたのにさ。紫原さんって頭良いんだね。今度オレに勉強教えてよ！」
てっきり嫌味を言われるかと思っていた私は拍子抜けしてしまいましたが、なぜだか冷えていた心が、少し温かく、軽くなった気がしました。
「う、うん……構わないよ。」
ぎこちない返事にはなってしまいましたが、頷く私に、東雲くんは爽やかな笑顔を見せました。
「え、本当？ありがとう！」
「いえ……」
困惑する私をよそに、彼はしげしげと私の答案と彼の答案を眺めていらっしゃいます。
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作者名：こっとんきゃんでぃ | 作成日時：2022年3月6日 13時
