2.お嬢様、テストです。 ページ3
「では、先日行った中間考査を返却していきます。」
始業のベルが鳴った後、メガネをかけた女の先生が入ってくるなりそう仰いました。
えぇと、たしかあの方は数学の先生でしたわね。
それから、私は転校してからすぐにテストがあったことを思い出しました。
うげぇー、とたくさんのクラスメイトが頭を抱えて嘆き始めました。
たしかに、高校の勉強というのは中学より一癖も二癖もあり、深い理解を必要とします。
私も、家庭教師から教材を何冊も課されて、泣きながらこなしていたので、勉強は……こと数学となると苦手です。
「それでは名簿順に返していきますので、名簿順に席を移動してください。」
先生の合図で、生徒たちはのろのろと、友達と駄弁りながら動き出しました。
私も席を移動し、座ると、前に座っている男の子がこちらをくるりと向きました。
「ねえ、紫原さんは自信ある？」
「え…？」
彼はたしか……東雲くん、でしたっけ。
私のひとつ前の名簿だし、その特徴のあるオレンジ色の髪ですぐに覚えることができました。
彼はカリスマ性があって、クラスでもいつも中心にいらっしゃるような存在ですのに、なぜ私なんかに話しかけるのでしょうか。
前の席の男の子だって、彼と仲が良かったはずですのに、と思って彼の前方を覗き込むと、なるほど、その子は今日欠席でした。
「自信、って……？」
首を傾げながら彼に問うと、気さくに答えてくださいました。
「テストのこと。オレ今回ヤバいんだよね……もしかしたら赤点かも。」
「はぁ……それは大変だね。」
「……めくん！東雲くん！早く答案を取りに来なさい。」
私が相づちを打っている間に、彼は名前が呼ばれたようですぐに答案を受け取りに走っていってしまわれました。
「紫原さん。」
ついで私の名前も呼ばれました。
私が教卓まで答案を受け取りに行くと、にっこりと先生に微笑まれました。
もしかして、点数が良かったのでしょうか。
わくわくと胸を高鳴らせて答案を受けとると、そこには三桁の数字が書いてありました。
「よくできています。さすが、お家柄も良ければ育ちもよろしいんですね。」
満足げに口角を上げていらっしゃる反面、私は重い石が乗ったかのように心臓が苦しくなりました。
此処では親の七光りという呪縛から逃れられるかと思ったのに、そうもいきませんのね。
少し残念な気持ちで席に着くと、東雲くんがこちらを向いてニヤニヤと笑いかけてきました。
3.お嬢様、不覚です。→←1.お嬢様、今度こそ嫌われないように。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こっとんきゃんでぃ | 作成日時：2022年3月6日 13時
