14.お嬢様、告白されます。 ページ15
「オレ、最初は本ばっか読んでて根暗で……お前のことつまんねー奴だと思ってた。」
「はい……？」
失礼が過ぎませんか！？
いや、私がそう振る舞っていたのがいけないんですけれど……
そんなしかめっ面な私をよそに、東雲くんは続けて言いました。
「正直、テストで満点だったときも、お嬢様だって知ったときも、最初はオレのこと見下してたんだって思ったし、天才型で何の努力も知らないような嫌な奴だと思ってた。」
「やっぱり、私が少しでも期待した好青年は居なかったんですわ……」
がっくりと項垂れると、東雲くんは「まあ待て」と言って、チッチッチと舌を鳴らしながら人差し指を振りました。
「けど、お前そんな器用なタイプじゃないだろ？答案見たときに確信した。」
「……褒めたいのか貶したいのか分かりませんわ！」
「褒めてんだよ。オレと一緒だなって思ったんだ。勉強も歌も、死ぬほど努力しなきゃあんなに高められない。」
「それで？」
「……こんなにコロコロ表情が変わるのも、その……可愛いと思った。」
「貴方が無理やり変えさせているんですけどね……というか、あの、結局何が言いたいんですの？急に改まって。」
全く彼の意図が汲み取れませんわ。
不思議そうな顔をする私に彼はイライラした様子で頭を乱雑に掻いて唸りました。
「あー……だからその、お前のことが気になるからもっと知りてーなってこと。」
「それで……？」
「だーーっ、もう！だから！付き合ってくれないか？って言いてーんだよ！！」
聞き間違い、ではないのでしょうか？
「えぇと、失礼。誰と誰が……ですの？」
「お前とオレに決まってんだろ？ったく、これだから世間知らずな箱入りお嬢様は……」
「私と、貴方が、ですか……」
正直、顔は知って数週間経つかもしれませんが、“本当の彼”とお話しするのは今日が初めてでした。
世間が言う“お付き合い”とは、私が考えるよりももっと気軽に行われることなのでしょうか。それにしたって、交際は愛し合う男女同士か、政略の内でのみ行われるものであるのに代わりはないでしょう。
彼は本当に私を愛しているのでしょうか？
けれど、私は、「私の父親のお金が目的ではないのですか？」とは聞きませんでした。
いえ、聞けませんでした。
かつての私ならば口にしていたでしょうが、それは、今私のことをただひとりの“紫原 A”として見てくださっている彼に、すごく失礼な言葉だと思ってしまいましたから。
15.お嬢様、付き合うって何ですか？→←13.お嬢様、タジタジです。
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作者名：こっとんきゃんでぃ | 作成日時：2022年3月6日 13時
