30.援護 ページ31
***
「...この車、逃走には向いてないんじゃない?」
『...私、これが一番しっくりくるの。貴方がきちんと所定のルートで戻ってきてくれれば、追いかけっこも無いはずよ』
助手席に座り、腕を組んで窓の外を眺めぽつりと呟いた言葉。
運転していたアスティは視線を移す事なく答えた。
「そう...それにしても随分と余裕ね?」
『...どういう意味?』
ふ、と口元を緩め挑発的な態度を取れば、横目で返される。
「RUMが最も怪しんでいるのは...バーボンとキール。自分の男が疑われているっていうのに、その作戦に素直に参加するんだもの」
『...貴方も知ってたの』
交際を公言した事は無かったのだろうが、ベルモットに知られた時点で、ジンやキャンティ達にも伝わってしまってはいたようだ。
自身は、RUMからその情報を得た訳だが。
割と有名だと返せば、怪訝そうな顔をされて。
『疑うも何も...彼らを監視していたのは私よ?何故RUMがそんなに気にしているのか...理解できないわ』
だから、拒否する事なく参戦しているのだと。
逆に無実を証明できるなら、それでいいと。
「ふぅん...じゃあ質問を変えるわ...何故貴方は、組織に居続けるの?」
『何故って...私の居場所はここしかないもの』
「!」
まるで用意されていたかのような答え。
けれど、ハンドルを握る手が強められたのも事実で。
『何?私が組織を裏切っているとでも?』
「...いいえ。変な事聞いて悪かったわ...今は作戦に集中しましょ」
自分で聞いてきたくせに、そう思っているのだろうな、と彼女の横顔を伺ってから視線を外へと戻した。
***
「(ねぇアスティ。私、貴方の事嫌いじゃなかったのよ。だから...生きて、彼と共に)」
RUMに助言してくれたのは、彼女だと知っていた。
本人はそんな素振り、一度も見せなかったけれど。
本当は、直接伝えたかった。
そうしたら、いつも余裕を装っているその表情が崩れるところを見られただろうか。
彼女と、子供達の笑顔の為にも。
この巨大な鉄の車輪は、自分がーー
「止まれぇぇぇぇぇぇ!!」
進路に回り込んだクレーン車は、転がり続けるそれを受け止める。
だが、耐えきれずに運転席部分は巻き込まれ、潰されてーー
『...キュラソー?』
名を呼ばれた、そんな気がしたところで、彼女の意識は永遠の闇へと落ちた。
541人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夕月(プロフ) - ユナさん» その時はまた読みに行きます!頑張って下さい!応援してますよ! (2016年5月18日 23時) (レス) id: f0544b0ee0 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 夕月さん» ありがとうございます!とても嬉しいです!申し訳ありませんが一度完結にさせて頂きましたm(_ _)m別作品にて更新していこうと思いますので、よろしくお願い致します! (2016年5月18日 23時) (レス) id: c161ddb9a6 (このIDを非表示/違反報告)
夕月(プロフ) - どの話も良かったですよ!(笑)私、この話凄く好きです!番外編も続くのなら楽しみにしてます! (2016年5月18日 20時) (レス) id: f0544b0ee0 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - まいまいさん» コメントありがとうございます!遅くなり申し訳ありません。。本当に励みになります!頑張ります* (2016年5月13日 13時) (レス) id: c161ddb9a6 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 立体起動装置愛用者さん» コメントありがとうございます!遅くなり申し訳ありません。。とても嬉しいです!まだまだ未熟ですが温かい目で見て下さると幸いです笑。また覗きにきてやって下さいませ*頑張ります! (2016年5月13日 13時) (レス) id: c161ddb9a6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ユナ | 作成日時:2016年5月9日 17時