【名探偵コナン】死役所勤めのわたくしですが、【萩原研二】

〃 ページ30

「⋯⋯それで悩んでるんだ？」
『⋯⋯うん、多分、私の決断は大事な人を守れるんだけど⋯⋯』
「⋯⋯」
『⋯⋯同時に、大事な人たちを悲しませるから』




俯いたままの私と、隣に座るでもなく正面に立ったままの彼。吐き出してから、何やってんだろう、ってカラ笑いしそうになった時。



何やらゴソゴソとカバンを漁った彼は、ぱさりと私の頭に何かを被せた。ほんのり香る石鹸の匂いと、ふわふわの感触。




「⋯⋯俺はお姉さんの事情は何も分かってやれねぇから、今から言うことは無責任な言葉かもしれねーけどさ」
『⋯⋯』
「"誰がどう思う"とか"誰かのために"とかぜーんぶ1回抜きにしてさ、」
『⋯⋯うん』
「"お姉さんがどうしたいか"で考えたら、ちょっとは気持ちが楽になるんじゃないかな？」




ドキリ、と心臓が音を立てた気がした。見ず知らずのなんなら現状顔さえ知らない、年下の男の子から言われた言葉が、深いところに刺さった感覚。




「少なくとも、俺はお姉さんの選択を応援するよ？」
『⋯⋯っ、』




多分、私が"何て言って欲しいのか"を察して出た言葉。だって最初に無責任な事言うって、わざわざ言ってくれるくらいだもの。すごく出来た子、最近の若い子、侮れない。









「ーーーー萩！早くしねぇと置いてくぞ！」
「あ、やべ、ちょい待ちじんぺーちゃん！！⋯⋯ごめん、お姉さん！そのタオルあげるから！」
『あっ、』



遠くから彼を"ハギ"と呼ぶ怒鳴り声が響いて、慌てて返事をして踵を返す彼に、顔は見せたくないけれど、一言伝えたくて声を上げてしまう。



『⋯⋯ありがとう⋯っ！』
「！いえいえ♪⋯⋯またな(・・・)、おねーさん！」




顔の両サイドでタオルを握りしめたまま、声だけ張り上げた。走り去る音を確認して、そっと掛けられたタオルをズラし、遠目で見たのは。

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