【名探偵コナン】僕があいした、ただひとりの君へ２【諸伏景光】

番外：世界はそれを愛と呼ぶ ページ33

◆同棲初期の話。
《昼ver.》






社会人になった頃は学生の頃は楽だったな、なんてよく思ったものだけれど、実際再び勉学に励んでみると、そこそこ大変だなと思う。


いや、今置かれている状況が、オレにとっては異文化という少し特殊なものだからかもしれないが。


何とか日常生活で困らない程度の英会話も出来るようになり、2度目の大学生を始めて数ヶ月。


周りの学生の大半は自分より歳下だけれど、何人か仲良くなった奴らの中に日本語が分かる者が居て、どうしようもない時に助けて貰ったりして。


いつまでもAにおんぶにだっこでは申し訳ないから、バイトも始めて何とか生活リズムが整ってきたところだ。



Aは普通に仕事へ行って、帰ってきてからはオレの課題をフォローしてくれたり、休日は気分転換に色々な所へ連れて行ってくれたり(といっても悪目立ちしないように相変わらず軽い変装はしつつだけれど)、とにかくオレに気を遣ってくれているのが物凄く伝わってくる。


家事も基本的にはしてくれて、一度分担を申し出たけれど、元々一人暮らしだったらやっている事だし、今は学業に専念してと言われてしまって、どうしたら少しでも返せるのか頭を悩ませるくらいだ。





つまり、物凄く恵まれた環境に居るんだ、オレは。


それなのに、多くの未成年の彼らだってやっている、学業とバイトのみの生活をこなすだけの事に、疲れとか、少しのしんどさを感じる自分が、情けなくて。



やっぱり慣れない言葉や文化のせいか？なんて思いながら、マンションのエレベーターに乗り込む。


目的の階に着いて、そう言えば今日Aは休みだったな、と少し気分が軽くなって鍵穴にキーを突っ込んだ。



帰った時に、誰かが出迎えてくれることの嬉しさを知ったのも、ココに来てからだ。それが好きな人なら、尚更。



「ただい、ま...」
『！ヒロ、おかえりなさい』



玄関を開けた瞬間、ほわり、と空気に乗って流れてきた香りは、懐かしささえ覚えてしまうような、久しぶりの匂い。



ほっとするような、優しいーーー



「っ、え、これって...」
『やっぱり気づくものなのね...』



ただいまのハグもそこそこに、リビングへと向かえば、テーブルに並べられた和食の数々。



そう、それは。



すっかり久々になった、出汁の匂いだった。

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