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「しかしその剥製師がちょいと高くついてね、当時資金もあまり無くて、とあるツテから組織の薬に手をつけたのさ。高く売れたよ」
『......や、』
「そしたらなんと!君が居るじゃないか!全く知らなかったよ。遠目で見た時は幻影でも見てるんじゃないかって思った!」
『...、』
「だから思ったんだ。このまま薬の横流しを続けていればいつかバレて、君が消しに来てくれるんじゃないかって!いいよ、そんな君も受け止めよう、なんたって君は僕が唯一愛し、」
ガン!!という音が、ドアから響いた。
生気を失ったかのような色をしていた彼女の瞳に、はっ、と光が戻る。
「キャロル!そこに居るんでしょう!?」
『っ、バーボン、』
「外へ逃げて!早く!」
「なっ、見張りはどうした!?っ、ぐっ!」
男にとって予測しなかった事態に腕を掴む力が弱まった。その瞬間を見逃さず、彼女はそれを振りほどき、回し蹴りをひとつ、男の横腹に叩き込む。
逃げろ、そう言ってドアの前で叫ぶ彼。ドアを開けるという手段を選ばなかった事には理由があるのだろう。
ならば、"外へ"出る為に残された手段は1つ。
上層階のこの部屋の、4階分下。
そこには、全体の8割がプールで造られた中庭が広がっている。
がらり、と窓を開けた彼女は迷わず、縁を思い切り蹴って飛んだ。
次いでバシャンと派手な音がする。
「なっ!?飛び降り、」
思わず横腹を抱えたまま男が窓から身を乗り出した、瞬間ーーーー前額部を弾丸が貫いた。
「ーーー愛ってのは、独り善がりじゃ意味ねぇだろ」
ぷは、と水面に顔を出したキャロルが見たのは、プールサイドに立つスコッチの後姿だった。自身の物ではない硝煙を吐くそれをポイ、とプールへと放り、手袋も同じく水中へ投げ捨てると、膝をついて手を伸ばす。
目の前に、差し出された大きな手。
「逃げるぞ!今宵の宿まで」
『...あり、がとう、』
ぐ、と引き上げられた彼女は、ドレスの裾を絞る。
わざと明るく振舞ったスコッチを見たら、先程までのぐちゃぐちゃに混ざった悲しい気持ちはもう何処かへ行っていた。
月をバックに少年みたいに笑ったその顔が、あぁ、好きだな、なんて思って、こっそり心の目に焼き付けたのは。
絶対、誰にも言えない。
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えぬ(プロフ) - ユナさん» 初めまして!いつも楽しく見させていただいてます!あの、新しい小説のリクエストってしてもよろしいでしょうか? (2022年6月1日 22時) (レス) id: 619e2b7b7b (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ムスメ3さん» 見返し!!ありがとうございます(´TωT`)間が空くと分からなくなりますよね、すいません(´TωT`)コメント凄く励みになって嬉しいです!ありがとうございますm(_ _)m (2019年10月28日 1時) (レス) id: 5a59395d41 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - 久しぶりに見返しました!とても面白いです!これからも更新頑張って下さい! (2019年10月27日 23時) (レス) id: 64e9274118 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ムスメ3さん» コメントありがとうございます!間空いてしまってすみません!イチャついてから完結させますのでまたお付き合い頂けると幸いです! (2019年10月27日 9時) (レス) id: 5a59395d41 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - どうなっちゃうのか楽しみすぎます!頑張ってください! (2019年8月24日 22時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユナ | 作成日時:2019年7月29日 11時