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「少し意外だったよ」
『何が?』
「キャロルがロック好きだなんて」
時おり歌いやすいようにキーを変えながらも、彼女はどの曲もさらりと歌った。歌詞を見ることもせず。リクエストしたのだから、と言われればそれまでだけれど。
『...母国を代表するようなバンドだからね、昔からよく聴いてたの』
「えっ、キャロルってイギリス人?」
てっきりアメリカ人かと思ってた、そう言った彼は間違ってはいなくて。
『"元"ね。今はアメリカ人よ。このご時世帰化なんて珍しくないでしょう?』
「...そう、だな」
ふと過ぎったのは、ロスで自ら手を掛けた男の事。奴が彼女の人生を踏みにじった事は会話から予想出来ていたから、成程、と納得する。
『...貴方のベースも、』
「うん?」
話題を変えるかのごとく続けられたのは。
『素敵だった。優しくて、綺麗で...でも強くて。貴方の心を映してるみたいに』
「!っ、」
真っ直ぐすぎるその言葉が本心である事が伝わりすぎて、少し眩しくて痛い。
そんな事ない、そんな、綺麗なものじゃない、なんて否定したら、彼女を困らせてしまうだろうか、なんて。
「...キャロルさ、なんかちょっと、素直になった?」
『?』
「いや、強いて言うなら、」
明るくなった、憑き物が落ちたみたいに。そう言いかけてやめる。あまりにもデリカシーに欠けると思ったからだ。憑き物だったのは間違いなくあの男なのだから。
相変わらず任務は上手くこなしているようだし、元々影があったかと言えばそういう訳ではない。いや、あったけれど、上手く隠していたと思う。
なら、この距離感は何だろう。物理的なものじゃなくてそう、以前よりも心を許してくれているようなーー
『...自分じゃよく分からないけれど、もしそうならそれはスコッチのお陰よ』
「え?」
おまけに、消し去りたい暗い過去の最後のページを、あんなにもキラキラとした月夜の景色で塗り替えてくれるなんて。
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えぬ(プロフ) - ユナさん» 初めまして!いつも楽しく見させていただいてます!あの、新しい小説のリクエストってしてもよろしいでしょうか? (2022年6月1日 22時) (レス) id: 619e2b7b7b (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ムスメ3さん» 見返し!!ありがとうございます(´TωT`)間が空くと分からなくなりますよね、すいません(´TωT`)コメント凄く励みになって嬉しいです!ありがとうございますm(_ _)m (2019年10月28日 1時) (レス) id: 5a59395d41 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - 久しぶりに見返しました!とても面白いです!これからも更新頑張って下さい! (2019年10月27日 23時) (レス) id: 64e9274118 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ムスメ3さん» コメントありがとうございます!間空いてしまってすみません!イチャついてから完結させますのでまたお付き合い頂けると幸いです! (2019年10月27日 9時) (レス) id: 5a59395d41 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - どうなっちゃうのか楽しみすぎます!頑張ってください! (2019年8月24日 22時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユナ | 作成日時:2019年7月29日 11時