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『...訂正するわ、貴方も良い人だった』
「...はい?」
『だって、スコッチとの付き合いってココに来てからなのでしょう?なのにそんなに彼の事を大切に思っていて、嫌いな女を助けちゃうなんて人が良すぎるわ』
「!」
踏み込まれた?そう少し警戒したけれど、風に髪をなびかせながら話す彼女の横顔もまた、優しいものだったから。
「...貴方のことを嫌いだなんて言った覚えはありませんが」
『あら、態度に出てるもの、分かるわよ』
「...正直に言うと少し苦手でしたが、そこまでは」
『じゃあそういう事にしてあげる』
そう言ってこちらを向いて笑った顔なんて、ただの歳相応の女性だった。これが"作ってない方"なら、やっぱりーーー彼女に黒は似合わない。
『...お礼を言ってなかった、助けてくれてありがとう』
「...どういたしまして。でも、助けたのはスコッチですよ」
『貴方の指示が無ければ動けなかったと言っていたもの』
アイツまた余計な事を、そう内心舌打ちしたけれど、もう今日は考えないようにしよう、と思い直しふ、と口角を緩める。
例え彼女が何者でも。彼に危害が及ぶ前に、自分が間に入ればいい。
眠れなかったのは、警戒心から来ているのもあった。登庁して、徹夜で仕事を片付けて、ロスまで飛んですんなり行かなくなった任務をこなして。その過密スケジュールは割といつもだけれど、すぐ隣には、気の抜けない彼女がいる。
脳と身体はとっくに限界を迎えていた。だからそれが解けた今、急に眠気がやってきて堪えきれなかった欠伸を噛み殺す。
『もう寝ましょうか?』
「...そうですね」
もしかしたら、彼女はそれにさえ気付いていたのかもしれない。気遣いが自分へと向けられたのなら、それは大きな歩み寄りだなと彼は思った。
『そう言えば、貴方達何か食べたの?』
「いえ、空腹感より勝るものがあったので」
部屋へと戻ろうとした彼女がふと振り返って尋ねる。
ふぅん、と返したあと、ふわりと笑ってそれなら、と続けた。
『明日、起きたら3人でブランチに行きましょう。近くに美味しいパンケーキ屋があるのよ』
「...それって、アメリカンサイズですか?」
少し引きつったような顔で尋ねる彼に、彼女はきょとんとした後、破顔した。
『っふふ、違うわ普通のサイズよ...じゃ、おやすみなさい、バーボン』
「!...おやすみなさい、」
こんな笑い方も出来るのか、なんて思いながら返事をして、彼も寝室へと足を向けたのだった。
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えぬ(プロフ) - ユナさん» 初めまして!いつも楽しく見させていただいてます!あの、新しい小説のリクエストってしてもよろしいでしょうか? (2022年6月1日 22時) (レス) id: 619e2b7b7b (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ムスメ3さん» 見返し!!ありがとうございます(´TωT`)間が空くと分からなくなりますよね、すいません(´TωT`)コメント凄く励みになって嬉しいです!ありがとうございますm(_ _)m (2019年10月28日 1時) (レス) id: 5a59395d41 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - 久しぶりに見返しました!とても面白いです!これからも更新頑張って下さい! (2019年10月27日 23時) (レス) id: 64e9274118 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - ムスメ3さん» コメントありがとうございます!間空いてしまってすみません!イチャついてから完結させますのでまたお付き合い頂けると幸いです! (2019年10月27日 9時) (レス) id: 5a59395d41 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - どうなっちゃうのか楽しみすぎます!頑張ってください! (2019年8月24日 22時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユナ | 作成日時:2019年7月29日 11時