【名探偵コナン】Pellucid Strawberry 2【安室・赤井】

84.Black Impact 9 ページ37

『問題はアナウンサーの仕事だけれど...』
〈それなら問題ない。江戸川コナンと言う少年が上手くやってくれたようだ...ジョディのお気に入りらしいが〉



その会話だけで、恐らく変声機で長期休暇の連絡でもしたのだろうと察する。
同時に彼も、とある仮説を立てたが、まだまだ立証するピースが少ない。



〈彼は何者だ？〉
『...小さな探偵さんの事？』


ふと、ワントーン下がった声に、背筋が伸びる。
君にとってもお気に入りか？随分と入れ込んでいるように見えたが、そう言われてしまっては、はぐらかす事も出来ず。


『...そうね、この世で3番目に死なせたくない...my little juwel、かしら？』
〈ホォ...1番目が彼、2番目が彼女...俺はそこには入っていないのか？〉


一瞬、何を言われているのだろうと面食らう。
1番がバーボン、2番がベルモット。
それなら、彼はーー


『ふふ、何言ってるの？貴方、殺しても死ななそうなのに』
〈俺も人間だ。いつかはそうなる〉


顔が見えずとも、今彼がどんな表情をしているか分かってしまって、彼女は少しだけ眉をひそめた。



〈なんてな。また連絡する。See you,babes.〉
『！？ちょっとその呼び方、』


やめてって言ってるでしょう、そう続けたかった言葉は、不通音により遮られる。
はぁ、と隠す事もなくため息を吐いた彼女は、路肩に停めていた愛車に跨ると、エンジンをかけた。





.






「誰？電話の相手...まさか新しい恋人じゃないでしょうね？」
「盗み聞きとは...いや、嫉妬か？」


耳元で叫ぶ彼女の声を遮断したところで、後ろからジョディに声を掛けられた。


聞かれぬよう屋上で応対していたのだが、最後のbabesが聞かれていたらしい。
意味は、恋人を呼ぶ時の愛称。
中でも、イギリスの一定の地域でよく使われるもの。



「違うわよ！でも確か、babeって...」
「イギリス人女性が最も呼ばれたくない恋人を表す単語だな」



フ、と口元を緩め、煙草を取り出し咥える。
つまり、半分揶揄い、半分嫌がらせなのだろうか。
けれど、彼がそんな風に女性に接する事さえ珍しく感じられて。



「で、結局内緒なわけ？」
「いずれ会うさ。彼女もまた、同志だからな」
「？」



近い将来、再び彼女の世話になるだろうという予感があった。
首を傾げるジョディにそれ以上語らぬまま、煙草に火を付けた赤井は、いつしか彼女が嫌いだと言った紫煙を思い切り、肺へと吸い込んだ。

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