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高3の初夏、Aは告げた。
『…私、悟のこと好き、かも』
頬を赤く染めて、瞳を潤して。初めて見るそんな姿に俺は大きく目を見開いていたのを覚えている。全身を駆け巡る血液が、心臓に集中していく気がした。これってつまり、Aは俺に惚れて告白したってことだよな。
心の中ではガッツポーズだった。一度、振られた身からするとなんとも言えない幸福感と言わせてやったっていう優越感を味わった。
そして俺たちは恋人になった。縁談が絶えない悩みを抱えていた俺は、Aが話していた通り「俺にはもう決めた人がいる」と実家に話した。それが功を奏したのか、縁談はピタリと止んだ。でも、それがいけなかったんだ。
「…は?」
「何回も言わせないでくれませんか?私が貴方の婚約者です」
「俺はそんなのに承諾した覚えはねぇよ…!」
「そんなに怒らなくても。私は嬉しいんですよ?だって、お義母様はあんな凡人の女よりも由緒ある家柄の私を選んでくれたんですから。まあ、当然の事でしょうけれど」
目の前にいる女は五条家と歴史的に付き合いがある家柄の人間だった。一度だけ縁談が来たことを覚えている。あの時断った筈だが、何故か今再びこうして婚姻を申し込んできている。縁談が止まったのは、Aについて粗探しする為だったってわけかよ。
「…意味、分かんねぇよ」
「単刀直入に申します。あの女とすぐさま別れて。五条家の時期当主として、私と婚姻を結びましょう」
「はぁ?誰がそんな言うこと──」
「従わなければ、彼女を潰す。家も存在も」
思考が追いつかなかった。その代わり、俺は殺気立っていた。俺の判断がAの運命を握っている。生かすも、殺すも俺の思うまま。
「あら、私を殺しても意味ないですよ。使いの者があの女の家の周りを張り込んでますからね。最強と言えど、流石に遠い距離の瞬間移動は無理でしょう?」
気に食わねぇが、的を得ていた。だからこそ、悔しかった。何もできない俺が、弱い俺が。
「…っ、クソが!」
やるせない思いをぶつける様に壁に向かって思いっきり殴った自分の手が痛い。
次の日、どんな顔をして学校に行けばいいのか、Aに会えばいいのか、俺には分からなかった。
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ロゼ(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます!!以前、少々トラブルがありましてボードは現在していないんです💦お声いただいたのに申し訳ありません🙇ご声援、ありがとうございます^ ^ (1月14日 0時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - ロゼさん» ✉️。こんにちは!とても面白いです!もしよろしければ一緒にボードで会話しませんか?お返事お待ちしています💝、更新応援してます! (1月9日 18時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - 眠民。さん» そんな風に言っていただけてほんっとに嬉しいです!夢主ちゃんもごじょるもそんなに褒めていただけるとは…!!ありがとうございます😭更新不定期ではありますが、待っていただけたら嬉しいです♡♡ (12月13日 22時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - コメント失礼します!!夢主ちゃんの性格が好き笑 ごじょせん推しというわけでは無いのですがこのごじょせんはマジでカッコいいっす‥。続き待ってます!!1日のご褒美なのでロゼさんの小説‥ (12月13日 16時) (レス) @page12 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - ねかあさん» コメントありがとうございます~!!推しの供給ってマジで大切ですよね😖ねかあさんにとって本作が少しでも供給になれていたら嬉しいです(ᵒ̴̶̷-ᵒ̴̶̷ ) (11月1日 23時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロゼ | 作成日時:2023年10月29日 8時