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無意識のうちに自分で爆弾を落としていたことに気付かず、それをしっかりと拾った悟は表情を変えず、にこりと口角を上げている。言葉と表情が見合っていないでしょうよ。…もしかして怒ってるのかな。何故か悟を前にすると、いつもの私じゃいられなくなる。
『この後一緒に飲もうって…』
「ふーん?」
気まずいというか、緊張するというか。手に汗を握る感覚だ。なんで私がこんな事に、なんて思うのは高専時代に悟と出会った時点でもう手遅れなんだろう。
「…ま、いっか」
『いいの?』
「もう彼氏じゃないんだしね。僕がとやかく言う事じゃないでしょ」
そっか。そうだよね。もう彼氏じゃないんだもん。でも、私なら2人きりの飲み会なんて行ってほしくないけど。悟はそんな風に思ってないのかな。
って、これじゃあまるで悟に引き留めてほしいみたいになってるじゃん。
「行かないの?」
『…断るつもりって言ったでしょ』
「じゃあ、どうする」
『……』
そうやって私に聞いてくる。選択肢なんて一つしかないのに。
『帰りたい、です』
「誰と?」
『…悟しかいないでしょ』
そう話せば、満足気に微笑む悟。昔から分かりきっている事を私の口から言わせることが余程好きらしい。なんて癖してやがるんだ。
『お金置いてくるから待ってて』と一度店に戻り、後輩ちゃんに一声かけると「先輩、彼氏いたんですか!?いたなら言ってくださいよ、もう!!」と背中を結構な力で叩かれた。相当、酔ってるな。…弁明するのも面倒だし、もう彼氏でいいや。こちらを見つめていた良い感じだった彼には小さく会釈して、店を後にした。
『お待たせ』
「ん」
軽く返事をした悟は当たり前のように私の手を包み込み、歩き出す。流れが自然すぎて、悟の熱がじんわりと伝わってきた頃に手が繋がれていた事に気付く。
『ちょっと、待って』
「やだ?」
『や、だじゃないけど……ハっ』
反射的に発言してしまった言葉に慌てて手を押さえてすぐさま後悔する。
「じゃあ、暫くこのままでいさせて」
顔が真っ赤な私を見てイジられると思ったけど、そんな事はなくて。握られている手には離さまいと言わんばかりの力が込められた。
「あの日の続き、話すから」
悟は過去を思い出すように遠くを見つめていて、澄んだ青色が白く濁っている気がした。
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ロゼ(プロフ) - マニ。さん» コメントありがとうございます!!以前、少々トラブルがありましてボードは現在していないんです💦お声いただいたのに申し訳ありません🙇ご声援、ありがとうございます^ ^ (1月14日 0時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
マニ。(プロフ) - ロゼさん» ✉️。こんにちは!とても面白いです!もしよろしければ一緒にボードで会話しませんか?お返事お待ちしています💝、更新応援してます! (1月9日 18時) (レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - 眠民。さん» そんな風に言っていただけてほんっとに嬉しいです!夢主ちゃんもごじょるもそんなに褒めていただけるとは…!!ありがとうございます😭更新不定期ではありますが、待っていただけたら嬉しいです♡♡ (12月13日 22時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
眠民。 - コメント失礼します!!夢主ちゃんの性格が好き笑 ごじょせん推しというわけでは無いのですがこのごじょせんはマジでカッコいいっす‥。続き待ってます!!1日のご褒美なのでロゼさんの小説‥ (12月13日 16時) (レス) @page12 id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - ねかあさん» コメントありがとうございます~!!推しの供給ってマジで大切ですよね😖ねかあさんにとって本作が少しでも供給になれていたら嬉しいです(ᵒ̴̶̷-ᵒ̴̶̷ ) (11月1日 23時) (レス) id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロゼ | 作成日時:2023年10月29日 8時