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「…は?お前、前は居ないって」
そう話しながら顔色を変えて起き上がった五条。
『あー、あれウソ』
初めからこいつに気持ちを伝える気はない。
あくまで、ただ私の話をするだけ。
『…まあ、私がその人のことをどれだけ好きでいてもどうにもならないんだけどね』
「え?」
『要するに一生片想いしてるってことよ。だからもう、その人のことを好きでいるのやめようと思う』
初めて人を好きになった。
自分でもこれほど好きになると思っていなかった。
けど、あんたから話を聞くたびにあの女の人のことをどれだけ好きなのか嫌でも分かってしまう。
勝手にその人に嫉妬して、勝手に苦しんで。
「ふーん。で、その好きな人って?」
『アンタに言うわけないでしょ』
「え〜教えてよぉ」
と、猫なで声で話しかけてくる。
サングラスの奥に見えた彼の瞳はどこか色っぽい。
『…そんな声出しても教えないから』
「チッ、ケチ」
そう、これは自分の中でケジメをつけるため。
『ほんと罪な奴だよ、ほんと…』
高望みはしない。
私はこれからも五条の隣で笑っていられればいい。
こうして、また話せることができたらそれでいい。
「…なるほど、じゃあ俺帰るわ」
『あ、ありがとね。話聞いてくれて』
そう言って部屋から出ていくその姿を見届け終わると、
『はぁ』
身体の力が抜け、その場にへたり込んだ。
『これで、終わったんだ…』
そう思うと寂しさが押し寄せてくるが、溜めていたことを本人に打ち明けたからか気分も少し楽になった。
そうだよ、私にしては頑張った方だったよ。
私の初恋はこんな形であっけなく終わってしまったけれど、これで五条への気持ちを忘れることができる。
きっと、大丈夫。
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皐摩(プロフ) - 胸がギュンギュンしました… (2022年2月15日 19時) (レス) @page50 id: c69f5fedc2 (このIDを非表示/違反報告)
もっち - めっちゃ面白いです。 (2022年1月15日 15時) (レス) @page47 id: ea5533ef50 (このIDを非表示/違反報告)
胡蝶 恵 - 目頭が熱盛(?) (2021年10月12日 20時) (レス) @page13 id: f5505c766c (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - 莉亜さん» ご声援ありがとうございます!夏油ルート検討してみようと思います!! (2021年9月29日 2時) (レス) @page41 id: a0125a0dc0 (このIDを非表示/違反報告)
怜 - えっ好き() (2021年9月23日 22時) (レス) @page38 id: 160a7ef55b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ロゼ | 作成日時:2021年2月20日 21時