夜のティータイム2 ページ10
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「……タイスケ……」
その名前を聞いたときには、無意識にその単語を俺は復唱していた。
嫌ほど聞き慣れたその名前は、俺の身体に染み付いていて脳裏に彼の顔が自然と浮かび上がってくる。
そのせいか、今まで秘めていた寂しさが表に出てきて起こす。「……君の名前は？」と声をかけられて、意識は現実に戻される。
「あ、……えと、俺は北山宏光。」
そう告げると、今度は彼が固まってしまった。「どうした？」と声をかけてやっとタイスケと目があった。
その後少し気になることを質問してみた。どうやらここの人たちは苗字は無く、全員片仮名の名前だけのようだ。
そうなるとここは自然と日本じゃなくなる。玄関も靴を脱かないのだから、どこかの外国なのだろうか。
じゃあ、何故森に入った瞬間日本と風習と種族がガラリと変わっているのか。
俺もまだ認められないけど、転生説かワープ説が有効になってくるのだろう。
それと俺は何者なのかはも危うくなってくる。それは、仮にあっちの世界だった俺がこっちの世界で死んだ場合あっちの世界の俺の存在はどうなるのだろうか。
俺も片仮名で名前だけになってしまうのだろうか。もう人間では無くなってしまったし、こっち側の住人として生きていかなければならないのか？
「……あ、のさ俺も同時に、ヒロミっ」
分からないことは彼に聞いた方が良いのかと思って、珈琲を注いでいる彼に話しかける。
するとそのことをつげ終わる前に、タイスケは俺に近づいて首筋に顔を埋める。
彼の手に置かれていたポットが床に弾かれて、痛々しい金属音が部屋中に響き渡り反響した。
「なに？」とも抱きしめ返せる勇気もなく、ただただ彼からの言葉を待つだけだった。
「……お前は一生、北山宏光だよ」
「同じものは、この世に存在してはいけない」
カプッ
言っている意味がよく分からなくて、今度こそ尋ねようとした瞬間俺の首筋から懐かしいような痛みが走る。
「……っあぁ！ふっ、ぁっ、んん、あ」
ドクドクと巡る血を追っていると、一気に注射のように身体から何かが吸い込まれてゆく。
倦怠感と快楽に襲われて、腰が砕けるように気持ちよかった。体制を崩す俺を彼は、腰に手を回して支えてくれる。
改めて彼は吸血鬼何だと自覚した。そしてまた俺もいくら血を吸われても気を失うことなく、快楽に身を捩る自身も吸血鬼になったのだと思い知らされた。
「……んあっ、っっ、ぁっう、んっ」
この時やけに自分の情けない声が、耳に焼き付いて彼の背中をかき乱すかのように服を握り締めた。
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作者名：supia | 作成日時：2022年6月26日 10時
