棺の中は骸骨1 ページ5
衝動的に入ってしまったことを、俺はすぐに後悔した。外見でも内装は広いものだと思っていたが、
これは───────「…………広すぎ……」
舞踊会が開けるのではないかと言うぐらいの玄関があり、下駄箱は無く外国式のようだ。
その大きな玄関の床には、どこのモノか分からない理解しがたい紋章が広がっている。
天井は暗くて見えないぐらい広くて、灯りは蝋燭が壁にいくつか付いているぐらいで薄暗かった。
そのせいで突き当たりが見えず、左右に広がる廊下が無限に続いているのではないかと錯覚させられる。
正面には横幅が無駄に長い階段があって、手摺りがこっており触れるには恐れ多い。
一階から見た様子の二階は壁にびっしりと、絵画が飾られていてどれもどこかの風景のようだ。
悩ましいのは、どこから探索すればいいのか。こんな館全体を調べるには一日あっても足りない気がする。
そもそも窓から見えた人影はどこに行ってしまったんだ。おそらくあの高さなので、二階から此方を覗いていたように思える。
しかも外観から見たときよりも窓が少ない。あの外側から見た窓はどこへ行ってしまったのか。
周りを見渡しても太陽の光が差し込んでいる所は、無いようだ。
「…………トリックハウスかよ、はは」
この状況で笑うしかない俺は、苦笑いを浮かべる。とりあえず、一階は無限廊下に呑まれそうで怖いから二階に行くことにした。
手摺りに捕まることなく、恐る恐る上へあがっていく。上に上がった瞬間、警報が鳴り響き斧が降ってきたらどうしよう。
ホラーゲームで見たことがある、罠を想像してしまいひとりで更に怖がる。
俺が階段を登り切ったと同時に、先程まで付いていなかった廊下に付いている蝋燭が何もされていないのに勝手に火がついて明るくなった。
誰もいないのにという恐怖と、遠くからかすかに聞こえる「キキキッ」というコウモリの声が俺を慌てさせる。
「…………俺、帰れるかなぁ」
無意識に出た言葉だった。何とも自分で不吉なことを言ってしまったのだろう。
けれど勝手に蝋燭が付くことや窓が無いところからそれも何だが本当に思えてきて、身震いが止まらない。
「……というか、どこから行けばいいのか……」
こういう不安なときは独り言が止まらないようだ。誰もいないはずなのに、広いせいか自分自身の声がハウリングする。
そのせいかまるで、誰かがいるように感じてしまう。
「……え、」
何の目的地も見当たらず、とりあえず人影らしきモノを見たあたりに移動してみると扉が半開きになっていた。
俺は誘惑されるかのように、気付いたらその部屋へ足を踏み入れていた。
50人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:supia | 作成日時:2022年6月26日 10時