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初めての吸血 ページ12

再びその手の中にあるモノを覗く。ドクドクと血液が中を巡って、誰かのモノだと想像すると寒気がする。

けれど吸血鬼は元々人間だったのだから、吸血鬼にしか分からない味というものもあるのかもしれない。

今抵抗を感じているこの血液だって、もしかしたら美味しいのかも。それに今後のことを考えると、飲めるようにならないと俺自身が困る。

俺は意を決して、その輸血パックを開けて中の液体を口に注入した。

タイスケはというと、「おー、男気あるねー」と呑気なことを良いながら俺のことを見つめていた。

中に生暖かいドロドロしたような、サラサラしたようなモノが流れ込む。俺は恐る恐る舌を擦り付けて、その味を確かめる。

「!?っ、お”ぇっ、」

味が分かった瞬間、猛烈な吐き気が込む上げて口に含んだモノを床に吐き出す。

それはただの鉄分豊富の血の味に過ぎなかった。口から垂れる血を俺は勢い良く拭う。

「んー、やっぱみんなそうなるんだね」

「けほっ、げほっっ」と中に行ってしまった血を吐き出すために必死に咳をする俺にまたもや他人事かのように分析し始める。

「っ、ぅ、みん、な?」

「うん、俺はそうならなかったけど、みんなは未だに美味しくないって言ってたよ」

「え、吸血鬼って血を飲まなくても生きれるの?」

「うん」

今度は吐き気とは違う感情が込み上げてきて、目の前の奴をぶん殴ってやろうかという衝動に駆られた。

けれどさっきので震えはまだ収まっておらず、力の入らない拳を小さく動かすことしか出来なかった。

けれど何で、コイツは俺の血を吸っているのだろう。「みんなそうなる」という発言からして、自分はそうならなかったとも捉えられる。

え、じゃあコイツ血が元々好きだったってことか?カニバリズムという恐ろしい単語が脳裏をよぎって、彼から放たれる雰囲気が少し怖くなった。

「口直しの珈琲、どうぞ」

いきなり立ち上がったのかと思うと、先程入れていた珈琲を俺に渡す。けれど手が震えているせいで、取れそうにない。

「いや、えと、」

それを伝えるのも何か、情け無いような気がしておろおろしていると「え、そっちがいいの?」と勘違いしたような口振りで俺の珈琲を飲んだ。

いや、お前が飲んでどうするんだよと突っ込もうとしたそのときにその言葉を発する口を塞がれる。

彼の舌が俺の唇に割って入り、一気に豆の匂いが鼻孔をかすめた。何で俺口移しされているのだろうと、ぼんやりとする頭の中で変なことを考える。

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作者名:supia | 作成日時:2022年6月26日 10時

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