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「…ったく、川上のヤツ。なんで入学早々僕があいつの手伝いなんかしに行かなきゃならないんだ」


不意に聞こえた人の声。

さっきまでは人の気配すらなかったのに。


「しかも新入生挨拶なんて冗談じゃない!」

ぶつぶつ文句をたれながらこちらへ向かってくる影。

言いようの無い胸の高鳴りがどうにもうるさい。



……私、この声知ってる…?



誰だかは思い出せない。

けど、あの棘のある言い方、でも実はすごく優しくて照れ屋で、


そして―――――…



「いっ…」

そこまで思い出したところで急な頭痛に襲われた。

やっぱりだ。思い出すことを頭が拒絶してる。


でも体は、思い出そうと、その存在を確かめようと懸命に動こうとしている。
 


痛む頭をおさえ、どうにか前を向く。


綺麗な赤色の髪が、風に遊ばれるようになびいている。

透き通った緑の瞳。華奢な身体の男の子。

いつの間にか彼は私の目の前まで来ていた。


「…何、人の顔じろじろ見てさ」

「あ、いや、その…」


学生だ。それも私と同じ学校の。

露骨に嫌そうな顔全開で彼は私を見やる。


「何なんだよもう。言いたいことがあるならいいなよね!まるであの子―…」


目の前の彼はそこまで言うとハッと息を呑んだ。


あの子…?


「ま、まさか…そんなことがあるわけ…っ」

大きな瞳を見開き、そしてそれは微かに揺れている。



「……っ」





私の目からは何故か涙が溢れ出した。

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作者名: | 作成日時:2013年12月31日 14時

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