▽当たり前じゃない/ガイ ページ48
シトロンさんがザフラ王国の第一王子ということを知り、その側近であったガイさんが劇団に加わった事はつい最近である。そのガイさんは側近とあってやる事なす事全てが完璧であった。そんなガイさんを寮のお手伝いとして観察しているのは最早日課である。
『ガイさんって完璧ですよね』
「急にどうした、大丈夫か?」
『丞さんが辛辣で大丈夫じゃないです』
パキパキと行動するガイさんを横目に、談話室のソファで丞さんと話をする。
大丈夫か?の前に頭って聞こえた気がしたのは気のせいにしとこう。そこまで丞さん鬼畜じゃないと思うし思いたい。
『私はお手伝いなのにガイさんみたいに信頼されてるかって言われれば、まだまだだなぁって思う事の方が多いので』
「....いや、」
『いいんですよ、事実ですから。だからこうやってガイさんの技を盗もうかと思って、』
「俺が教えられる事なら教えるぞ」
丞さんが何かを言おうとしていたが言葉を被せて話していれば、いつの間にか目で追っていた筈のガイさんがすぐ近くで首を傾げていた。
『が、ガイさん...!』
「と言ったが、高峰に俺から教えられる事なんてない」
『いやいや、そんな事ないですよ!』
「いつも茅ヶ崎にコーヒー頼まれる前に出していたり、監督に言われる前に洗濯取り込んでいたりしているだろう」
『そ、れは、お手伝いとして当たり前で』
ガイさんの無垢な視線が何処か心苦しくて自然と頭が下がる。隣にいる丞さんからも溜め息が聞こえてきて、びくりと体を震わせた。
それぐらい出来なきゃ、ここに団員でもない大学生の私がいる必要なんて無いじゃないか。
「コイツ馬鹿なんですよ、ガイさん」
「....ふむ、みたいだな」
『ぐっ、心にくる言葉を...!』
「高峰、それは当たり前じゃないぞ」
ぽす、とガイさんの大きくて無骨な手が不器用に頭を撫でる。
「それが出来るのは相手をずっと見てきて想ってきたからだろう、少なくとも今の俺には出来ない」
『っそ、んな事』
「高峰だから出来る事だろう」
尊敬しているガイさんからのそんな言葉に、自分がここに居ても良いという許しを貰ったようで自然と涙が溢れ出す。
ああもう、こんな予定じゃなかったんだけどなぁ。ガイさんからそんな言葉貰えるなんて思わないじゃないか。
『っ最高の褒め言葉ですね!!』
「お前は深く考えすぎなんだ」
「あぁ、だな」
狡い大人達に泣かされたその日は、一生忘れられない日となった。
終わり ログインすれば
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←▽メイク/泉田莇
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R1(プロフ) - いつも楽しく読んではひとり変な舞を踊っております。そこで十座くんで帰りが遅くて心配されるというシチュエーションをお願いしたいです!お時間があれば書いていただけると嬉しいです! (2022年6月9日 21時) (レス) id: f12a74fee1 (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - 初さん» 初めまして。誤字報告ありがとうございます、そして気付かずにすみませんでした...。これからも更新頑張っていくので不束者ですがよろしくお願いします! (2022年4月17日 23時) (レス) @page45 id: c4adadee4d (このIDを非表示/違反報告)
初(プロフ) - 初めまして、お話素敵でした!卯月さんではなく卯木さんですので誤字報告させて頂きました。 (2022年4月17日 20時) (レス) @page45 id: 14241c496e (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - さらさん» 喜んでいただけたようで良かったです!こちらこそありがとうございました!! (2022年3月21日 20時) (レス) @page44 id: c4adadee4d (このIDを非表示/違反報告)
さら - お話最高でした!!書いてくださりありがとうございます!!綴くん格好よかったです!!本当にありがとうございました!! (2022年3月20日 23時) (レス) @page44 id: f9b4a84be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零音 | 作成日時:2017年2月24日 16時