▽メイク/泉田莇 ページ47
『うーーーーん、』
机の上はアイブロウ達で埋まっていて、それらと睨めっこが数分続いていた。何故睨めっこする事になったのかと言うと、発端は少し前に遡る。
『...あ、』
このMANKAIカンパニーでお手伝いをさせて貰っている以前に未だ大学生である私は、講義を受けるために軽くメイクをしていたのだが、大事なメイク道具であるアイブロウペンシルが無くなってしまったのだ。
...流石にアイブロウ出来ないのは困る。アイシャドウ無くてもいいけどそれは嫌だ。
『あ、あざみく〜ん』
「....ん?」
『アイブロウペンシルないですか』
秋組新メンバー、兼劇団員のメイク担当として入ってきた莇くんに借りようと思い泣きつけば、流石はその道の人。アイブロウが何十種類も出てくる出てくる。そして睨めっこが始まったのだ。
そりゃあそうだよね、何本もあるよね。でもこんなに出されても私にはどれがいいとか分からんが??
「決められねぇなら俺が決めていいか?」
『え、あ、はい。え、是非』
「ふっ何だそれ」
因みに私が一限から講義があって莇くんより家出る時間が早いから、莇くんはもう少し時間に余裕がある。
まぁ私には余裕なんて無いんだけどね、ギリギリ。いっそサボってしまおうか...いや、流石に大学生になったのに正座で説教は御免被る。
「Aさんにはこれが合うと思う。これ、描きやすくて落ちにくいからオススメ」
『看板メイク担当のお墨付きなら間違いないね!』
そう言うと少し照れたように笑い、アイブロウペンシルのペン先のキャップを外し始めた。
....んん?ちょっと待って、その流れは良くないんじゃないか?選んでもらうだけで私は満足なんだけどな、あれ?
『あ、あざみさ〜ん...?』
「Aさん目、閉じて」
『ッ!?』
莇くんは自分でメイクする気満々のようで、そんな言葉を口にするもんだから有無を言わせない独特な雰囲気に呑まれた私は素直に彼の言葉に従って瞼を閉じた。
メイクだよ。メイクしてくれるっていうのは分かってるよ、不本意だけど。でも、キスする前のセリフ見たいで心臓やられました自分の顔面偏差値考えてもらっていいですかね。
「ん、出来た」
『ありが、と』
降ってきたそんな言葉に緊張も少し解れて目を開ければ、まだ案外近くにある顔に心臓が止まってしまいそうになる。それに気が付いた莇くんも慌てて後退り、頬を真っ赤に染めて部屋を出て行った。
『...狡いなぁ』
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R1(プロフ) - いつも楽しく読んではひとり変な舞を踊っております。そこで十座くんで帰りが遅くて心配されるというシチュエーションをお願いしたいです!お時間があれば書いていただけると嬉しいです! (2022年6月9日 21時) (レス) id: f12a74fee1 (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - 初さん» 初めまして。誤字報告ありがとうございます、そして気付かずにすみませんでした...。これからも更新頑張っていくので不束者ですがよろしくお願いします! (2022年4月17日 23時) (レス) @page45 id: c4adadee4d (このIDを非表示/違反報告)
初(プロフ) - 初めまして、お話素敵でした!卯月さんではなく卯木さんですので誤字報告させて頂きました。 (2022年4月17日 20時) (レス) @page45 id: 14241c496e (このIDを非表示/違反報告)
零音(プロフ) - さらさん» 喜んでいただけたようで良かったです!こちらこそありがとうございました!! (2022年3月21日 20時) (レス) @page44 id: c4adadee4d (このIDを非表示/違反報告)
さら - お話最高でした!!書いてくださりありがとうございます!!綴くん格好よかったです!!本当にありがとうございました!! (2022年3月20日 23時) (レス) @page44 id: f9b4a84be1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:零音 | 作成日時:2017年2月24日 16時