酷 ページ3
目が覚めた。
いや、覚めてしまった。
目の前には無機質な景色。
病院だろうか
バタバタと慌ただしい音がする
警官「目が覚めたのか！良かった！」
良かった？何が？
私だけ生きて苦しみ続けることがよかった？
警官「早速で悪いが君は犯人を見たのかい？」
鼓動が早くなる、息が出来ない、苦しい
警官「君の情報が犯人の逮捕に繋がるんだ！話してくれ！」
あれ、
貴「･･･(声が出ません)」
惨めな私にお似合いだ。
警官「･･･声が出ないのか？紙とペンを用意しよう」
用意してもらったところで有益な情報はない
私は犯人を見ていないと書いた
気づいたら皆がし んでいたと
嗚咽の出るようなあの景色が浮かんだ
警官「･･･つかえねぇな」
貴方「･･･！」
警官「俺が仕事をするのは正義のためじゃねぇ、金と名誉のためだ。喋れないし、有益な情報も持ってないお前には用はない。」
貴方「･･･(ごめんなさい)」
警官「謝るぐらいなら俺のとこに犯人連れて来いって笑」
貴方「･･･」
誰も私の事なんて気にしていない。私はこの世界にいるのだろうか。
静かに透明になってしまっても誰も気づかないのではないだろうか。
静かに消えてしまっても。
*****************************
それから程なくして私は施設に入れられた。
自分の住んでいた街から遠く離れた場所にあるこぢんまりとした施設だ。
施設の大人たちは子供に暴行をし、子供たちは互いに蹴落とし合う地獄のような場所だった。
弱い私は格好のターゲットだったらしい。
施設のみんなは私の事を気が触れた子や呪われた子と揶揄した。
施設の大人たちにもたくさん殴られた。
何度家族と一緒に逝けなかったことを悔やんだかわからない。
何度し んでしまおうと思ったかわからない。
腕は既に切り傷だらけだ
痣が痛む、体が震える。
心は既にし んでいるのに体は生きているのだ
まるで、人形になったようだ。
大人「おいお前、ちょっと来い。」
施設の大人は私たちの事を決して名前で呼ばない。名前を覚えているのかも定かではない。
そして、呼ばれる時は大抵殴られる時だ
諦めていても体は震える、
怖い、恐い、こわい、コワイ
近くの部屋から悲鳴が聞こえる、きっと殴られているんだろう。
目を堅く閉じ怯えながら大人の後ろを歩く
大人「お待たせ致しました。この子で間違えありませんね？」
今日、私の人生は大きく変わることになる。
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作者名：桜音ユキ | 作成日時：2019年6月9日 21時
