○ ページ13
「楽しかったぁ…」
普通のデートなんてできひんから、いつも同じようなことしかしないのに…
それでも心の底から楽しそうなAにほんまに救われる。
『また行こうな？…あ、ちょ、』
俺がリードを持っていたシーサーが急に早歩きしだす。
『ちょ、なにぃ(笑)Aはゴーヤーとゆっくりおいで？』
シーサーのペースに合わせて歩を早めながら、時々Aとゴーヤーを振り返って見失わないように。
へっへっ…とわんこ特有の口呼吸をしながら止まったのは、いつものお散歩コースにある休憩スペース。
ベンチと一枚板でできたテーブルがあるだけの、本当に簡素なもの。
「ここだったんだ、シーサーの目的地」
『せっかくやし、座る？』
さっきまでカフェで座ってたけど、まだ夕方。
まだ帰るには早いし、ちょうどええわ。
そう思って座ると、Aが、あ、と声を漏らした。
細いきれいな指が示す先には、逆さまの虹。
「環天頂アーク…」
『なんかよぉ分からんけど、きれいやな』
空に向かって、ファインダーを覗く。
かしゃ、かしゃ、と、心躍る音。
すると、隣から、ぱしゃ、という別の音。
「ふふ、撮っちゃった」
そう言って見せられたスマホの画面には、いきいきした表情でカメラを手にする俺。
『それ、後で送ってや』
こういう何気ない日常を、これからも積み重ねていきたい。
なんて思いながら、Aからもらった写真をトプ画に設定した。
story2��カメラ��Akito.K -fin-
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作者名：yun. | 作成日時：2020年10月30日 18時
