4. 営業部 ページ4
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私がこの会社に勤め始めてから、あっという間に8年が経った。
大学でプロダクトデザインを専攻していた私は、念願叶って、家具や食器をメインに扱うこの会社に就職したものの、
「まずは営業で経験を積みなさい。」
と、その頃の私には到底理解できない条件を突きつけられて、営業部に配属された。
デザインに営業経験とか必要あるの?
こんなところで時間を無駄にしたくない。
口には出さなくても、毎日心の中でそんな疑問を唱えていた私に、
チューターとしてついてくれていたひとつ上の先輩が、ある日、一緒に営業先を回った帰りに言った。
「私、なんでこんなことしてんだろ・・・って、思ってんだろ(笑)」
整った顔で、だけど、冷たい口調でそう言った先輩に、図星をつかれて、私は返す言葉がなかった。
「いえ・・・そんなこと・・・」
「ウソつけ(笑)おまえの考えてることなんて、ぜーんぶお見通しなんだよ(笑)」
「・・・」
「私がやりたいのはデザインなのにー。こんなとこでおっさん相手にニコニコお世辞言ってる場合じゃないのにー、って?(笑)」
「・・・」
そして、言葉が出なくてうつむくだけの私に、その先輩は聞いた。
「おまえはさあ・・・誰かに使ってもらえるものが作りたいの?それとも自分のためだけに作りたいの?」
「それは・・・みんなに使ってもらえるものが作りたいに、決まってるじゃないですか!」
「だよなあ?(笑)」
「はい・・・」
「じゃあ・・・市場でどんなものが求められてるかも分からなくて、みんなに使ってもらえるものって作れんの?」
そう言われて、まるで頭をトンカチで殴られたかのような衝撃を受けた。
そんな私の顔を見て、先輩はまたフッと笑う。
「私と同じ感性の人だけに使ってもらえればいいんです・・・って、それはもう職人だよな?でも、おまえは職人になりたいわけじゃないんだろ?」
「・・・」
「プロダクトデザイナーになりたいんだよな?そのための市場調査みたいなもんだとは・・・思わなかったわけ?」
そんなこと、考えたことなんてなかった。
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ゆん*(プロフ) - ぴーまんさん» そう!あっちこっちにふらふらり。そんな優柔不断な子が描きやすいんです(笑)Jの攻めにご期待くださーい! (2014年9月3日 23時) (レス) id: ef176538c5 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん(プロフ) - ゆん*さん» ほんとだぁ~恋愛マスターみたい(笑)ゆんさんの描く主人公ちゃんって、結構フラフラしてますよね?(笑)キライじゃないです~(笑)潤くんの攻めに期待大です~o(^o^)o (2014年8月31日 19時) (レス) id: e9e2051c7a (このIDを非表示/違反報告)
ゆん*(プロフ) - ぴーまんさん» 攻めて、引いて、どう出てくるのか・・・どうぞお楽しみに☆ (2014年8月31日 14時) (レス) id: 6cd285a405 (このIDを非表示/違反報告)
ゆん*(プロフ) - ばにらさん» 満喫していただいてるようで嬉しいです♪第2章もどうぞよろしくでーっす! (2014年8月31日 14時) (レス) id: 6cd285a405 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーまん(プロフ) - 潤くんハピバ~o(^o^)o豹変潤くん攻めますね~♪ (2014年8月30日 20時) (レス) id: e9e2051c7a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆん* | 作成日時:2014年8月27日 23時