愛しい人

34 you ページ34

あれからどれくらい泣いたのか、気がついたら寝ていて、外は少しだけ明るくなっていた。

今日も仕事なのに、お風呂入ってないや…


泣きすぎたのか頭も痛い。

さっぱりしようとシャワーを浴びる。


鏡に映る自分は、酷いものだった


「目すごい腫れてる…化粧で誤魔化せるかなあ」


泣いて冷やしたりもせずに寝たからか、真っ赤になった自分の瞳。



シャワーを浴びてさっぱりしたところで、気持ちはなにも変わらずにいた。


シャワーから出ると、お母さんがご飯を準備していてくれて、
昨日あんな状態で帰ってきたのに何も聞かないお母さんに、少しだけ胸が痛くなった。
ちゃんとしたら話聞いてもらおうって、今はまだ内緒にしておこうと思った。





ご飯を食べてるときも、化粧をしてるときも、仕事先に行く途中も、

頭の中には彼が居て、


女の子として見てる


その言葉がずっと離れずにいた。


わたしなんかが告白しても、彼はきっと真面目には受け止めてくれないんじゃないかなって思って

わたしなんかよりも、もっともっと彼にお似合いの人なんてたくさんいるし、彼の近くにだってたくさんいるはず。

なのに、ただの一般人でしかも彼のファンなんて…




彼と付き合うなんて無理だよって思うのに、

少し期待をしてしまってる自分がいる。




あんな別れ方しちゃったからわたしから連絡なんてできないけど、
またご飯に行こうって言ってくれた彼の言葉を信じて待ってみようと思った。







あれから、ご飯に行った日からすでに2週間ほど経っていて。


なにも音沙汰はない。彼が忙しいのは何よりも承知している。だけど悲しいものは悲しい。
毎日携帯をチェックしている自分が少しだけ虚しくて。



この先も連絡があるなんてわからない。あのとき限りだけだったのかもしれない。

けど、それでも、ファンではないひとりの女の子として、アイドルじゃないひとりの男性を、




「いらっしゃいませ」



今日もわたしは、彼を想いながら仕事をするんだ。

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