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弘樹と一緒にご飯を食べるようになってから早1週間が経っていた。
時の流れとは早いものだ、家が賑やかになったと感じてもうこんなに経っているのだから。
そして、今日も今日とて彼が家に来るはずなのだが30分経っても彼は来ない。
自分の部屋から見える彼の部屋を見やっても、カーテンが閉まっていて中の様子を伺うことは出来なかった。
いつも時間ピッタリに遅れてくることのない弘樹だから、私は心配になっていた。
あの親父にいつもよりもっと酷いことをやられているのではないか。・・・いや、この時間だ。もうとっくに彼の父親は仕事に出ているはずだったが。
リビングに戻り、小さなため息をつく。
するとテーブルに置いていた携帯電話から着信音が鳴り響いた。
ディスプレイに表示された名前を確認すると、そこには『安西弘樹』との文字。
私はすぐに電話に出る。
「もしもし、どうした?」
『ごめんなさい、Aさん・・・!実はお昼寝をしていて寝坊しちゃって。今すぐそっちに向かうので鍵開けといてくれますか?』
良かった、ただの寝坊だった。
普段しっかりしている弘樹にもこういう一面があったのだな、と思いながらクスッと笑う。
「大丈夫だ、もう開けてある。そんなに急がなくてもお前がいつも時間ピッタリに来てくれているのは分かっているから、心配するな。」
ほっとしたのか、ふぅと息を漏らす声が聞こえる。そんな彼も愛おしく思える。
『じゃあ、今から行きますね・・・っ、お父さん・・・!?』
すると、弘樹は驚いた口調でアイツの名前を呼んだ。・・・仕事に行っていたんじゃなかったのか。迂闊だった、こんな時間に家を出ようとしたならば弘樹はきっと怒られてしまう。そのせいで彼は傷付くことになるだろう。
「弘樹?大丈夫か?・・・何が、」
『おい、弘樹。こんな時間に何処へ行こうというんだ。・・・まさか隣の家か?お前仲良くしてもらってるもんなぁ。はは、きっとお前のこんな姿見りゃ嫌うだろうけどよ。』
電話の向こうから、弘樹の父親の酷く低い嫌な声が自分の耳に入ってくる。
『・・・何処へだって行っていいでしょ。』
『なんだと!?一体誰に偉そうな口を聞いているんだ、誰が何の為に働いて疲れて帰ってきてんのか分かってんのか!?』
『痛い、離して!お父さんには・・・アンタには関係ない!』
そう言ってドタバタと走る音が響く。
私はまだ繋がっていた電話で弘樹に指示をした。弘樹には悪いが、私には我慢が出来なかったのだ。
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優桃(プロフ) - ゆーなさん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言って頂けると頑張ろうって思えます(*^^*)これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2018年1月21日 21時) (レス) id: a4872d24e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーな(プロフ) - 面白かったです!お気に入り登録しときました!これからも頑張ってください! (2018年1月21日 21時) (レス) id: 9e3b82e97b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優桃 | 作成日時:2018年1月21日 21時