＊ ページ2
「ここが八百屋さんで、あっちがお肉屋さん･･･そしてあそこにあるのが僕の行きつけのお花屋さんです。」
弘樹くんは話してみるととてもいい子で、心優しい少年なんだと実感した。
彼は花好きで、花の種類に詳しいんだと。
「ありがとう、詳しく案内してくれたお陰でこの街についてよく分かった気がするよ。」
「いえ、とんでもないです。こちらこそ家から連れ出してくれて嬉しかったというか･･･」
そう言って弘樹くんは眉を下げて微笑む。
そんな彼の笑顔に、胸が締め付けられた。
すると彼は、こんな事を話し始めた。
「実は僕･･･父から虐待を受けているんです。本当はあんな家に居たくなくて、帰りたくなくて･･･だから、今日Aさんに案内してほしいと言われて嬉しかったんです。」
やっぱりそうだった。
私の感は間違っていなかったようだ。
私は、少し暗い表情になった彼の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「わわっ、Aさんっ？」
「そう暗い顔をしなさんな･･･そうだ、1つ気になっていたのだが。他の近所の人達は君のその事情を知らないのか･･･？」
すると彼の表情はまた暗くなってしまった。
表情からしてなんとなくだが分かってしまう。
「知っていますよ、そりゃもう音が酷く聞こえてしまっているみたいで。でもいいんです、何も無かったかのように接してくれてるだけで。変に同情されると･･･辛いだけだから。」
「そうなのか。警察とかに相談は？」
「していません･･･周りの目がなんか怖くて、それと父にバレたらなんて言われるか。想像するだけで足が竦みます。」
近所の人達も虐待については知っているのか。
なのに見て見ぬふり、人間とは面倒な事に関わりたがらない。そういうものだろうが余りにも酷い話だ。
もう、ここの人達の事は深く信じられない。
そう感じてしまう。
「何かあったら家に来なさい。いや、来たくなった時でも、不安な時でも、いつでもいい。私を頼ってくれ。仲良くしよう弘樹くん。」
私がそう言うと、弘樹くんの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。
彼は嬉しそうに微笑んで、元気よく「はい」と叫んだ。
「･･･ありがとうAさん。こんな風に言ってくれた人、生まれて初めてだ。」
彼の笑顔を見て、私は彼を「幸せにしてあげたい」そんな風に思うのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 40人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優桃(プロフ) - ゆーなさん» 初めまして、コメントありがとうございます。そう言って頂けると頑張ろうって思えます(*^^*)これからも頑張りますのでよろしくお願いします。 (2018年1月21日 21時) (
レス) id: a4872d24e8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーな(プロフ) - 面白かったです！お気に入り登録しときました！これからも頑張ってください！ (2018年1月21日 21時) (レス) id: 9e3b82e97b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：優桃 | 作成日時：2018年1月21日 21時
