ににたんと

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「チョコ、いらないんだったっけ」

「えっ？！
俺、そんなこと言ってないっ」

慌てて否定する俺に
まだ頰の赤い彼女はにこにこと
いつもの微笑みを返す







キスの後


お互い初めてでもないのに
妙に緊張してしまって


微妙な距離感で
各々ミルで豆を挽いたり
お湯の準備をしたり…


テーブルに戻ってきて
やっといつもの感覚に戻った


コーヒーは珍しく
ブラックのままで
砂糖もミルクも準備されてない


「ジョンイナ」


声をかけられて
視線を上げると


「目、つむって」


言葉と一緒に
瞼を閉じるA


「ん」


素直に目をつむると
口に押し当てられるのは




…多分、チョコ


軽く開けて されるがまま
口の中に含むと


ギョンスひょんのチョコよりも



もっともっと
濃厚な甘さが広がる





まるでさっきの
キスのように…




「甘いから
砂糖もミルクもいらないでしょ」


視覚を遮断しているからか
いつも以上に
心地良く聴こえてくるAの声音



「…美味しい」

「ふふ、ありがと
あ〜、でも見ないでね
カタチ崩れちゃってて…」



苦々しい声で喋るAに
「なんで？」と
目をつむったまま聞いてみれば



「…あんまりジョンイナがギョンス君のチョコを褒めるから」


小さく返ってくる声に
思わず俺はふき出してしまった



目を閉じたままでも
彼女の一挙一動、表情
全てがその声音からわかる



「そんな理由の為に
俺は目を閉じ続けてるの？」



彼女といると笑みが絶えない


「だって、ジョンイナが〜」


きっと今は拗ねた顔して
眉間に薄くシワを寄せてんだろ？



「…ほんと、ばかだなぁ」

「ジョンイナから
バカ扱いされるなんて…」



違うよ


バカなのは俺


例えば
すっごいボロボロに崩れたチョコが出てきたって
とんでもない味のチョコを食べさせられたって




きっと…
いや
絶対俺は

笑って許しちゃうんだ



だって、わからない？







「貴女のチョコだから
欲しいんだし、食べたいんだよ？」

5月5日→←5

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