冥界の主と少年。 (ページ31)

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カボチャと言えば。ページ31

「お腹すいた…」

今日は頑張って仕事したせいなのか、お腹がすいた。

どこそこのアニメに出てくる動物達のように「力が出ない」とうめいて、パンのヒーローに助けを求める。
もちろんそんなファンタジックなヒーローが冥界に居るはずもなく、力のない声が部屋に響く。

冷蔵庫に何かあるかな…
ふらつく足取りでキッチンへ入り、冷蔵庫を開けると目に飛び込んで来たのは、

カボチャ。

どこもかしこも

カボチャ。

両手で抱えるほど大きいものや手のひらサイズのもある。

「……」

同じような光景を前にも見たことがあるので今回は叫ばなかった。

無言で冷蔵庫のドアを閉め、振り向く。

「あ、冥界さん居たんですか暇なら手伝ってください」

そこには、ひたすらカボチャの中身をくりぬいて横のビニール袋に捨てる少年と、その中身を突っつく雀達。さらにその横で中身をくり抜かれたカボチャに顔を彫る兄貴がいた。

「今日はハロウィンだそうです
秋の収穫を祝い、悪霊退散する祭りだそうです
ジャック･オ･ランタンと言うカボチャのランタンを飾ったり、魔女やモンスターが近くの家々を訪れてお菓子をねだり、お菓子をくれなかった人を襲うらしいですよ」

「…そんな恐ろしい祭り聞いたことねぇよ」

コイツのあってるようで違う恐ろしい情報は一体どこから来てるんだ…

「って言うか中身まだ食えるから!! 捨てるなよ!!」

「だからさっきから食べてるじゃない」

急にポンと煙が立ち込めて、口いっぱいにカボチャをほおばっている鈴芽が現れた。
じゃあ、この雀たちは親戚の方々か…１羽と目が合ったので軽く頭を下げると威嚇された。
鳥に嫌われてるのかな…私…

「で、何作ってんの…？」

「ジャック・オ・ランタン」

少年はそう短く答えると作業に戻った。
鈴芽は無心にカボチャを貪り、兄貴は真剣に顔を彫っていた。
なんだかいたたまれない…

なにこれ、冥界さんもなにかしないといけない雰囲じゃん…

「カボチャの中身さ…」

「？」

結構小さい声でつぶやいたつもりだが、まわりが静かなので予想以上に大きく響いた。
みんなが作業を中断して私を見つめる。
そんなに見ないで!! 冥界さん、こう見えてあがり症だから!!

「か、カボチャの中身さ！捨てるのもったいないし、なんかカボチャの料理作るよ」

～冥界の主観察日記～

･冥界さんはあがり症らしいが本当だろうか…

「いや…素直に信じろよ…そこは…」