冥界の主と少年。 (ページ23)

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家出。ページ23

「ヤバイな…」

辺りを見渡してポツリと呟く。

私は今、少年を探すため雨の中を駆け回っている。
少年が家を飛び出したまま帰ってこないのだ。

いや、別に心配とかじゃなくてただ騒ぎになったら面倒だと思っただけだ！
そう自分に言い聞かせながら辺りを見渡す。

排水溝からは水がドバドバ溢れかえっていて、道がもう川のようになっていた。
念のためにマントを羽織ってきたが、全部びしょ濡れだ。少年は何も持たずに出て行ったからきっと私よりも濡れているだろう。

橋の下で膝を抱えて泣いているのかもしれない。
もしかしたら怪我してるのかも。
マンホールの蓋が外れてその中に落ちたりして…。

「あああ違う！少年に限ってそんなことはっ…」

そうだ。少年はいっつも想像していた斜め上をつく。ありきたりなパターンで来るはずがない!!

早まる気持ちとマイナスになっていく思考を必死で落ち着かせて、冷静に考えてみた。

もしかしたら兄貴が早めに帰ってきていて、兄貴の家へ行っているのかもしれない。
鈴芽のところだってありえる。
とりあえず心当たりがある場所に…と走り出そうちした矢先に川の土手でうずくまる影を見つけた。

まさか…あれは……

「……しょう…ねん？」

「おや、冥界さんじゃないですか」

うおいいいい!!なんで一番ありきたりなパターンで来た!?
つか、何素直に振り向いてんだよ!!普通なら躊躇うか振り向かないかのどっちかだろ！
しかもコイツ、堂々と雨に濡れてやがる!!しかもなんかドヤ顔だ!!堂々としたって別にかっこよくねぇよ！

「よくここがわかりましたね」

そう言って少年は立ち上がり、私と向き直る。

「いや…なんか私が基地見つけたみたいなこと言ってるけど…ここ、家の真ん前だから…」

「なにを言っても絶対現世に帰りませんからね」

「いや…まだ何にも言ってないから… って言うか帰らないのは家じゃなくて現世なんだ」

いつものようなやり取りになっているが今はそんなことやっている場合じゃない。

「ほら、もういいから早く帰るぞ」

そう言って促しても、少年はその場から動こうとしない。

～文字数の関係で次のページへ続きます～

～冥界の主観察日記～

・冥界さんはピンチの時にパニックになりやすい。

「もういちいち突っ込むの疲れた…」