冥界の主と少年。 (ページ22)

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お盆休み。ページ22

「僕、帰りませんよ」

静かにそう言った少年の答えに私は顔をしかめた。
お盆なので少年を現世に帰らせて一人でゆっくりしようと思ってたのに、何を言ってるんだコイツは。

「なんでだよ」

「なんでも」

「理由を聞いてんだよ！」

「……」

今日の少年はなんだか何時もよりしつこい。
何度理由を解いただそうとしても黙り込むか「帰らない」の一点張りだった。
もう本当勘弁してくれ。冥界さんは暑さとかでいろいろストレス溜まっててイライラしてるんだ。もう我慢の限界なんだ。

「お前、いい加減にしろよ！ガキの面倒みるのどんだけ大変かわかってんのか!? たまには休ませろ!!」

私はとうとう抑えきれなくなって立ち上がり、怒りを爆発させた。

「休ませろって、あなたはいつも休んでるじゃないですか! 家事だってほとんど僕がやってるのに…」

すると珍しく少年もいつものポーカーフェイスを崩して怒っていた。
それを見て、怒ったとこ初めて見たな…なんて心のどこかで呑気なことを考えた。
少年は拳をわなわな震わせながらなにかに耐えていたが、ふと、いつもにポーカーフェイスに戻った。

「…もうこの話やめましょう…」

「………」

少年はそう言うと静かに出て行った。
扉が閉まったのを見て、私はソファーに座り直す。
なんなんだよ。
しゃくに触ったから家出するつもりか。
怒りは一向に収まらず私は近くにあったクッションを持ち上げ、床に叩きつける。

「……」

別に出て行ったていいよ。
アイツ元から天国行きだったし。

「あーあ、めんどくさいヤツがいなくなって清々した！」

そう思ってグーと伸びをする。
声はこの広い部屋の中に響いて虚しくこだまする。
別に何かある訳じゃないが天井を見上げる。

窓の外ではいつの間にか黒い雲が空を覆っていた。
水の雫が一つ、二つと地面へと落ちる。やがてそれは雨になり、容赦なく誰もいないこの「冥界」と言う名の空間に降り注ぐ。

そう言えば私はずっとこの広い空間にいたんだな。
最近賑やかになったから忘れるところだったよ。
…すずめは…現世へ帰ってるかな。あの兄貴ですら留守だったしな。

「………静かだな」

自分の声と雨音しか聞こえないこの空間。
望んでたはずの静寂。

なのに…

なんで…

寂しいとか…思ってんだろ…

～冥界の主観察日記～

・冥界さんは意外とおセンチである。

「このコーナー空気読んで！？」