お盆。 ページ21
「ただいま戻りました」
ギィ…と古びた扉が軋む。兄貴の家に涼み行っていた少年が帰ってきたのだ。
「おう… はやかったじゃねーか」
「留守でしたので」
「あーそう」
そう、エアコンが壊れてしまったのだ。しかも、主要動のデカイやつ。
エアコンはそれしかなかったので、今、この家は砂漠状態である。なんか…最近こういう状況ばっかりだな。
おい、作者。いくらネタがそろそろ切れるからってこれは無いんじゃないの?
「あ"ぁぁぁ… あぢぃよぉ……」
夏は別に嫌いじゃないが、この暑さは嫌いだ。扇風機の前で、扇風機と一緒に回る。
お出掛け用の服からいつもの服に着替えた少年は、ソファにストンと腰掛け、未だに扇風機とともに回り続けている私をじーっと見てる。
「なんだよ…」
「いえ、相変わらずバカだな…と」
「うるさいな」
ムッとして、扇風機から離れ少年のとなりにドサリと座った。
うわ、やっぱ暑いわこれ。意地はって扇風機から離れなきゃよかった…
「そう言えば、」
一人で後悔していると隣に座っていた少年が口を開いた。
「今日はなんだか人が少ないです」
「何処が?」
「街が…と言うかこの冥界全体がですよ 本当はもっと人で溢れかえっているはずなのに、誰一人いませんでした」
「あぁ…今はお盆だからな…」
「お盆?」
「知らないの?死んだ者の霊が現世に帰る日のことだよ…まぁ…分かんなかったらググれ」
「冥界の主がそんな事言っていんですか」
お盆の時はみんな現世へ帰るので、天国と地獄の繋ぎ目である冥界からは完全に人がいなくなる。
そう、このガランとしたただの空間が本当の冥界なのだ。
「みんな現世に帰るから誰もいないんだよ」
「だから今日は仕事休みなんですね」
私はソファーの隅においてあった雑誌を手に取り、ボーと見つめる。表紙には『やってきた!夏のお盆休み特集!』と大きく書かれてあった。
「そうだ、良かったらお前も現世に帰ったらどうだ?」
「え?」
「 母親の顔とか見て来いよ」
雑誌のページをパラパラめくりながら、少年に提案した。
いくら大人びているからってガキはガキだ。まだまだ母親に甘えたい年頃だろう。
少年が留守のあいだに私も一人でゆっくり過ごそう。
そう思っていたのに。
「僕、帰りませんよ」
〜冥界の主観察日記〜
・冥界さんは全然仕事に行ってないのに休みがある
「うるせーよ 雰囲気壊すな!!」
6人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒猫柚月(プロフ) - 少年君、面白いです! (2016年5月26日 21時) (レス) id: b28f5a93d4 (このIDを非表示/違反報告)
黒桜アルペジオ(プロフ) - たのしみにしてます!! (2016年2月26日 17時) (レス) id: b28f5a93d4 (このIDを非表示/違反報告)
白桜 - とても面白いです!いつも読ませてもらってます。 (2016年2月11日 20時) (レス) id: b28f5a93d4 (このIDを非表示/違反報告)
りあ(プロフ) - おもしろかったです!よかったら私の作品 見てください (2016年2月10日 15時) (レス) id: d722fb9a07 (このIDを非表示/違反報告)
sayaka(プロフ) - ヘモグロビンさん» いえいえ。ありがとうございます。 (2015年12月25日 20時) (レス) id: a1946caf5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:でんでんむしの奇行種 x他2人 | 作成日時:2015年3月7日 20時