【声優】瀬良ちゃんが愛されている。のに。

安らかな夜 ページ12

『こ、こたつだぁ…!』

夜9時過ぎ、林ちゃんのマンションにお邪魔して、最初にこたつが感動とともに私に押し寄せる。東雲家では毎年大晦日、兄妹か父さん、誰かの家に集まる。今年の大晦日当番は林ちゃんだ。

「え、どーしたのこれ」

「買った」

叶乃ちゃんと一緒に滑り込む。実家にはあったけど、長らく入ってない。どうやら林ちゃんは暖めておいてくれたらしく、こたつのなかは楽園だ。

「こら、手洗いうがいせえよ」

冷蔵庫からお酒をとってくる林ちゃんが、こちらに呼び掛ける。

『はーい』

渋々こたつからでて、洗面所に歩く。靴下越しの冬のフローリングが爪先に冷たい。

改めてこたつに入り直して、缶ビールを開ける。プルタブをカシュッと開けて、胸のところでかまえた。

「えーと、今年も一年お疲れさまでした」

『「お疲れさまでした」』

「じゃ、乾杯」

『「かんぱーい」』

音頭にあわせて、缶をつき合わせる。今年はトマト鍋だ。

他愛もない話をしながら、鍋をつつく。

「今年はどうでしたか」

『私はすごーく順調だった、有り難いことにね。あ、茄子足す?』

「足す足す」

「〆はうどんでいい?」

『うん』

「林は?」

「俺餅」

林ちゃんは餅が好きだ。私はお腹にたまるからあまり好んでは食べないのだけれど、林ちゃんは昔から私の分のお雑煮まで食べる。
うどんと餅を一緒に鍋に入れ、煮ている間に林ちゃんは冷蔵庫に向かう。

「おい海!酒ないんやけど」

『んぇぇ?そんなに飲んだっけ?』

「6本も缶空いてんじゃねーかアホ、これ500やぞ」

『ごめんて、買うてくるから』

「いい、叶乃が潰れてる」

『あらま』

箸を持ったまま卓上に伏す叶乃ちゃん、某さかなの女の子みたい。

「初詣行くか?」

『二年参り?…叶乃ちゃんは?』

「ほっとこうぜ、なんか3、4日寝てないみたいだから。…おせちっぽいもの買ってってやろ」

『わかった、林ちゃん寝室入っていい?』

「おう、何で?」

『毛布』

「あーね」

手近にあった毛布を手に部屋に戻り、そっとかける。

「おし、行くか」

一応鍋やビールの缶は片付けた。
あ、と呟いて、スマホを開く。

『ちょっと待って!来て、こっち』

伏せてる叶乃ちゃんの隣に呼ぶ。

「何」

『写真。…父さんに送る用と、Twitter用』

「…お前が自分からTwitterを気にするようになったのが一番の進化だわ」

『うっさい』

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瀬良 海 @sera_sea0613

今年も有り難うございました。
よいお年を!

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