誰にも、触れさせへん。 ページ15
健人さんの息遣いを間近に感じて
頭の中がふわふわして、はやる鼓動に胸が苦しい。
微笑んだ彼に人差し指でそっと唇をなぞられて
顔も身体も熱くて、どきどきして、恥ずかしいけど、目を逸らす事ができへん。
腕の中のAの瞳から、溢れる不安や戸惑いは
そっくりそのまま、俺自身の想いにリンクしてるみたいや。
なんとなく、彼女の唇を人差し指で、なぞってた。
テーブルの上のAのスマホから、着信音が鳴り響いた。
ライン電話の画面に、九条ジョーと表示が出てる。
手を伸ばしてスマホを取り、渡そうとしたら、
画面を確認したAは、受け取らずに、俺を見上げる。
「どうする？九条からや」
首を横に振るから、マナーモードに切り替えて、またテーブルに戻した。
「九条、Aの事、狙ってんねんで」
スマホは、テーブルの上で震え続けてる。
『そんな事……』
「単独前の楽屋で、俺に言うてた」
呼び出し画面が、閉じて
〈もう、寝てしまったん？〉
〈やっぱり、今から会えへんかな？〉
そう画面に、文字が表示される。
九条さん、なんであたしなんかに？
とりあえず、お断りしよう。
スマホに、手を伸ばそうとしたけど
また健人さんに、抱き寄せられてしまう。
「九条に会いたいん？」
『違い、ます。お断りしようと、思て』
見上げたあたしの唇にまた、唇が重なる。
強く吸われて、舌があたしの舌に絡みつく。
頭がぼーっとして、身体中が震えて、痺れて、熱い。
息が苦しくなって、健人さんの背中を、両手で掴んでしまった。
個室やけど、ここは、居酒屋やから。
頭では分かってるけど、単独終わりの高揚感で、コントロールが効かへん。
それに、Aが両手で、思いっきり抱きついてきてるし。
最初から、ちゃんと二人っきりになれるとこに、行ったらよかった。
俺の脳は、本能と劣情に支配されてしまって
Aの気持ちを気遣う余裕を、失くしてしまってた。
「A、九条に獲られたくないねん」
「軽く食べたら、すぐにここ、出よ」
ぼんやりと俺を見る瞳も、甘い吐息が零れる唇も濡れて、艶々と光ってる。
早く、二人っきりになりたい。
今すぐに、その白い肌に触れて
抱きしめて
Aの全てを識って
感じて
俺の全てを識らせて
感じさせて
九条にも
誰にも
触れさせへん
渡さへん
俺のもんや
「烏龍茶で、ええかな？」
呼び出しボタンを押したら
Aは、黙ってうなずいた。
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すーゆみ(プロフ) - 朝凪さん» めっちゃ嬉しいです。コメントありがとうございますm(_ _)m只今、現実世界で将来のための最終ミッションのため、更新が中々できていません。お待たせしちゃって、ほんまに申し訳ありませんm(_ _)m (2022年1月11日 7時) (
レス) id: dfaa17b8c0 (このIDを非表示/違反報告)
朝凪 - 設定やストーリーが素敵で一気に読み進め何度も読み返しています！ 要所要所の言い回しも綺麗でとても好きです。続きが読めるのを楽しみにしています (2022年1月6日 1時) (レス) @page39 id: f50a50fbe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：すーゆみ | 作成日時：2021年1月20日 21時
