俺だけの、そばにいて。 ページ2
九条side
病室のドアをノックしようとしたら、水上と明後日の約束をしてる、A。
明後日、ボクらの単独ライブに誘うつもりやったのに。
しばらく廊下で、様子を伺ってた。
『先生、そんなに見ないで.....。』
「どうして？」
『だって.....。』
え、ヤバない？
もしかして.....。
音をたてないように、スライドドアをそっと滑らせて、隙間から中を見る。
水上とキスしてるA。
明後日、楽しみにしてる。」
『はい。あたしも。』
水上を見上げるAは、めちゃめちゃ色っぽくて、神々しいまでに美しかった。
圧倒的敗北感に打ちのめされて、絶望的な気分で、エレベーターホールに向かう。
エレベーターの扉が開いて、健人が降りてきた。
「え、九条！」
「あ、今は行かんほうが、ええよ。」
「なんでやねん！」
「Aと水上のラブシーン見たないやろ！」
「はぁー？！ウソやん.....マジか.....」
頭を抱える健人と、放心状態のボク。
Aside
水上先生を病室から見送って、今の自分が物凄く中途半端で、誰に対しても誠実やないから、大キライ。
水上先生も、山田さんも、洲崎さんも、九条さんも、あたしの事をほんまに誤解してる。
気持ちはありがたいけど、みんなに気を遣わせて、迷惑ばっかり、かけてもうてる。
とりあえず、山田さんのお部屋の居候は、おしまいにしないと。
水上side
明後日、Aと病院以外で会う約束をして、ニヤニヤが止まらない。
芸人なんていう、世馴れた連中と比べたら、きっと付き合った女性なんて、雲泥の差だと思うし。
彼らほど、Aを楽しませ、笑わせてあげられないだろうけど。
それでも彼女の知的好奇心には、充分応える事ができるし、満足させてあげられるはずだ。
聡明で、頑張り屋の彼女には、いつも感化されているし、尊敬している。
Aに愛されて、尊敬されるような、唯一無二の存在になりたい。
そのためには、どんな事でもするし、やれる。
それが実は、世馴れた彼らには少々ずる賢く見えたとしても。
攻撃は、最大の防御なり。
Aに後悔させたりなんて、しない。
彼女の大切な母親も、きちんと治療成果を出してみせる。
先手必勝を狙い過ぎて、焦ってキスしてしまったけど。
Aは、悪く思ってないみたいだし。
さて、明後日はどうすればいい？
どうすれば、Aを俺だけのものにできる？
俺だけしか、目に入らなくなったらいいのに。
ずっとそばにいて。
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作者名：すーゆみ | 作成日時：2020年8月29日 21時
