検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:234,586 hit

第4話。 ページ29

ピンポーン…

約束の10分前。

やっぱりミユキは時間に正確だなぁ。

私はそのチャイム音を聞きバタバタと階段を駆け下りた。

「お母さん、髪型とメイク大丈夫??」

「うん、バッチリ」

お母さんはそう言うとグーサインを出した。

「ありがとう、行ってきますっ!」



ガチャッ

扉を開けるとミユキは携帯をいじって私を待っていた。

ミユキが私を待ってる。

これがどんなに幸せなことか。

心臓がじーんと苦しくなる。

ダメダメ、お祭りはこれから。

私は気を取り直してミユキに駆け寄った。

「ミユキ、おまたせ」

「……」

私の声に反応したミユキは何も言わずにお祭りがある方向へ歩き出す。

冷たい態度。

その態度に胸がちくりと痛む。

浴衣の着付けも頑張ったし髪型とメイクだって2時間以上かかった。

少しくらい褒めて欲しかったなぁ…

といっても口すら聞いてもらえないんだけど。

目だって1秒も合わなかったし…。

こちらを振り返りもせずにスタスタと歩くミユキの後ろ姿が涙で少し霞む。

進むにつれて人が増えていく道。

どんどん開いていくミユキとの距離。

ミユキにとって私なんてここを歩く知らない人達と同じくらいなのかもしれない。

いや…それ以下か。




ドンッ

「…きゃっ」

下を向いて歩いていたせいか誰かにぶつかり私はその場に倒れこんだ。

それから人混みのせいで頭に足が当たったり手を踏まれたりしてなかなか起き上がれない。

ミユキ…

ミユキはどこ?

下駄…下駄も片方ない。

どんなに時間をかけて準備してもこれじゃ意味ないじゃん。

なんだろ…

すごく虚しい。

どっちにしてもこんな姿じゃもう会えないよ。

今日は帰ろう…

「…何してんの、ドジ」

そう思い立ち上がろうとすると少しため息混じりの声が頭上から聞こえた。

その声の主は私の腕を掴むと勢いよく上に引き上げ無くしたはずのもう片方の下駄を履かせてくれた。

「ミユキ…なんで…」

「わり…ちょっと冷たくしすぎたわ」

「…っ」

ミユキのその一言で我慢していた涙が溢れ出した。



ミユキ…

やっぱり貴方は酷い人だよ。

「あーあ、せっかく綺麗にしてたのに台無しになったな。」

彼はそう言うと優しく私の頭を撫でる。

「ほら手…」

「え…いいの?」

「手つないどかねぇとまたこけるだろ」



私をあれだけ酷く突き放しといて、

たまに凄く優しくする。



自分が馬鹿だってことはわかってる。

でもね、なんでだろ。

貴方から離れられる気がしない。

第5話。→←第3話。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 8.8/10 (724 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1100人がお気に入り
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

kitty(プロフ) - コメント失礼致します。続編のパスワードを教えていただきたいのですがよろしいでしょうか? (2021年3月1日 2時) (レス) id: ec02268633 (このIDを非表示/違反報告)
ツミキ(プロフ) - こんにちは!コメント失礼します!続編のパスワードをお伺しでもよろしいでしょうか! (2021年2月20日 21時) (レス) id: 38aa17f1c1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - コメント失礼します!よろしければ続編のパスワード教えていただきたいです!よろしくお願いします。 (2021年2月20日 8時) (レス) id: 69753dea94 (このIDを非表示/違反報告)
なの(プロフ) - こんにちは、コメント失礼致します。いつも作品楽しく読ませて頂いております。もしよろしければ続編のパスワードの方お伺いしてもよろしいでしょうか?よろしくお願い致します。 (2021年2月15日 7時) (レス) id: ad7059f36c (このIDを非表示/違反報告)
あられ@帝国民(プロフ) - コメント失礼します!続きがすごい気になるお話でした!!もし主様がよろしければ、続編のパスワードを教えて頂きたいです!よろしくお願いいたします! (2021年2月14日 14時) (レス) id: dc7474ee4c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:まりあ | 作成日時:2019年6月4日 4時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。