続き ページ12
ある日、いつも通りAの元へ交易をしに行こうとすると、きりやんから声がかけられた。
「きんときー」
「おう、どうしたんだよ」
きりやんはニコニコしながら話し始めた。
「それがな、今エメラルド交換してる羊使いより好条件の村人が出たんだ！」
「！！」
「それで村人の入れ替えしたいんだけど俺、別でやることあるんだよね。きんとき頼める？」
…ついに来てしまった。
「ああ、いいよ」
「サンキュ！じゃあまた後で」
きりやんは俺にそう言い終えるとチェストの方へと向かっていった。これから建築でもするのかな。
「(嫌だな……)」
これから俺は愛する人を殺さなければならない。そんなの、嫌に決まってる。けど、やらなければならない。
俺は重たい足取りで彼女の元へと向かった。
ーーー
屋上に着くと、そこにはいつも通りAが居た。
『あれ、きんとき早くない？』
「ちょっとAに用があって」
勇気を出せ、俺。戸惑ってたらAの不安を煽るだけだ。
「実は…Aより良い条件の羊飼いが生まれたんだ」
その話をするのはいたたまれなく、俺はAの目を見て言うことが出来なかった。
「(きっとAは悲しい顔をしているんだろうな…)」
心がぎゅっと苦しめられる感覚を感じる。
あまりにも心が痛くて何も話せなくなっていると、Aが口を開いた。
『良かったね！おめでとう！』
陽気にそう言うAに思わずびっくりした俺はAの顔を見る。すると、Aは無理矢理笑顔を作っているようなひきつった顔をしていた。そんな表情を見てしまった俺は更に胸がぎゅっと締め付けられる。
「っ………」
『そんな苦しそうにしないでよ、私は笑顔なきんときが好きだよ』
「笑顔でいられるわけがないだろ……」
『まあそうだよね…私も正直怖いし……』
………
勿論これから明るい会話なんて出来るわけもなく、俺達の間でしばらく沈黙が流れる。
すると、Aが沈黙を破って話し出した。
『けど、大丈夫だよきんとき。ただ私が望まれない羊飼いだっただけ。みんなは、きんときは何も悪くないよ』
優しい声でそう囁くA。
『だからさ…私を一思いに殺しちゃってよ』
1番考えたくなかったその言葉が頭の中に響いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リリルル | 作成日時：2020年1月8日 4時
