陽だまりのようなきつね【WT】【反応集】【短編集】 (ページ18)

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「夜更かし、しちゃおっか」

数十分前に入り込んだベットから抜け出して、しんと静まったリビングの椅子へと深く腰がける。...と同時に、パチッと明るく照明がついて。視線を向ければ優しく微笑む彼が居て、思わず目を瞬かせた。
彼の手には2人分のコントローラーが握られていて。眠たげな彼は躊躇なくゲーム機の電源を入れる。テレビの前に胡座をかいたのを見て『...いいの?』なんて何故だか泣きそうになってしまえば、組まれた脚の間を指さす彼。

「Aちゃんの数少ない甘えたですから」

お腹へと回ってきた腕や、首に触れる耳や頬から伝わる体温が眠気を誘う。ゲームを進めていくうちに段々と瞼が重くなってきたのに気付いてか、そっと私の指先から機械的な感触を奪って。
再び2人でベットに入り込めば、今度こそ夢の中へと。

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「朝、どうせ睡眠不足で辛くなるぞ」

自室から出てリビングで薄暗い中、膝を抱えていたら聞こえた静かな声。扉に寄りかかって不機嫌そうな表情を浮かべた彼に驚いて無反応でいると、呆れたような諦めたような溜息をつかれる。なんだか悲しくて、そんなの分かってる、と口にするのに被せるように、彼は電気を付けた。
再び彼の方を向けば、背中に隠していた様子の枕が手に。

「…1人じゃ眠れなそうって思った」

彼は自身の部屋に戻らず私の部屋へと、有無を言わせない雰囲気で私を押し込んで。
同じベットに入った直後、布団の中で遠慮がちに重ねられた手を握りながら呟かれる。心配してくれていたのか、眠る前の私の様子を細々と話す彼に自然と笑みがこぼれて。
愛情をたくさん感じるから、抱き締めてとは言えなかった。

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「ごめん、まさか起こした？」

疲れているはずなのに寝付けず、少しイライラしてきてしまって。こういう日に限ってひとりなのを恨みながらベットの上で蹲っていれば、動画の為に進めておかなければいけないゲームがある、と私が寝室に入る前に言っていた彼の声が暗闇の中から聞こえてくる。
申し訳なさもありつつ控えめにノックをすれば、彼は焦ったように立ち上がり此方に来てくれるから甘えてしまう。

「…ん、いや、珍しいから、可愛いとか思ったりさあ」

するわけですよ、なんて。ぎゅうっと温もりを求めて扉の前で抱き着いてしまった私を突き放すこともせず、今度は一緒に寝転んでくれた彼が呟く。
ほんのりあかい頬を隠すようにか掌で私の目を覆って、おやすみ、と。眠りにつくまで抱き締めてくれていた。