▽ ページ16
kn
「え〜...A、しゃけと互角ってまじかぁ」
あるゲームの試合後、相手のキル数やデス数が表示された瞬間、その言葉が私の耳へと届く。他のメンバーが賑やかなのに対して、マイクで拾えるか拾えないか曖昧な程の小ささだった。無意識だろう聞き慣れた呼び捨てに、こっそりとメッセージを送り指摘する。“「ゆるんでた、ありがと」”と驚くペンギンのスタンプとともに返事が来て口角が上がる。
「格好つけたいもんでしょ、ゲームだとしてもさ」
家へ招かれた際、彼がいるソファに腰がけるとちょっぴり照れながら言われる。『妬いちゃった?』とだけ、彼のさらさらとした髪を梳きつつ返せば、「しゃけにね」って。笑みが零れるのを抑えて頬を撫でると、可愛らしい紅色に染まった。
sm
「こんなんね、初参加者には負けないっすよ」
寡黙なイメージがある彼が珍しくメンバー以外に挑発的な発言をしたので、コメント欄は大騒ぎ。それも初めてコラボする私に向けてなので尚更。
しかし私も『聞いてたスマイルさんじゃないんですが』と好戦的な彼に絶叫しながら言うので、それはもう他参加者達の間にも笑いが起こった。
「...牽制になるなら何でもいい」
“スマイルの独占力ヤバ”,“付き合ってる?”という疑問で埋め尽くされたコメント欄を彼に見せながら文句を零せば、本から目を逸らさず告げられる。
珍しく彼からの感情を真正面から受け取って嬉しさを感じつつ、でも...なんて思ったけれど、微かに耳があかく染まっている彼には何も言えなかった。
kr
「Aちゃんのリスナーさん達見てる〜?」
コラボが決定する前から自然と配信に出現するから、不思議に思いながら皆んな受け入れていく。
私を含め“実況者仲間”としての立ち位置を確立しようとしているのに気付くはずもなく、コラボ動画で距離が近くても特に触れられないし流される。
『ねえ、良くないよ...』なんて再生回数が伸びていく動画を眺めて言えば、マグカップをふたつ持った彼が此方に近付いて楽しそうに笑った。
「...別れる予定も無いし良いんじゃね、って」
思いますケド、と、眼鏡を直すふりをしながら顔を隠す彼が可愛らしくて許してしまいそうになる。
じぃ、っと覗き込むように見詰めれば、じんわりあかく染っていって。彼の可愛さに勝てずに怒れないまま抱き着くだけの私も良くないね...
／
smさんはあからさま過ぎて公表せざるおえない
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 241人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛奈 | 作成日時：2022年6月28日 2時
