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『私は私の意思で此処に居て、貴方を選んで、好きだと思ったよ』
「っ、僕も、ですよ」
『ならそれで良いでしょう?態々確認するなんて必要ないと思う。
私はありのままの貴方が好きだし、見ていたいな。今も昔も、凄く素敵だよ、アズール。』
「.....〜っ...信じません」
『本当の事なのだけれど』
久し振りだ、耳まで紅くして照れる彼を見たのは。掌に顔のパーツを埋めて、熱を持っているのか何だか湯気すらも見えてきた。
微笑んでしまったのがバレないように、コツン、っと手を置いていた肩へ頭を預けた。
身を隠していたゴーストさん達が、扉から此方を覗いて生暖かい視線を送ってくる。人差し指を唇に押し当て、ぺこりと軽く頭を下げた。
「...安心、したんです、サインをしてくださった事に」
『うん』
「海底に居た時の事...ずっと後悔してましたから。貴女を縛り付けた上に、無鉄砲な条件を押し付けました、し」
『ふふ、自覚はあったんだ』
「あるも何も...人気モノの貴女ですから、不安、だったと、いうか。何故なのか分からなかったんです、自分を好いてくれているのが」
『何回も言ってたね。懐かしいな』
「可笑しな僕を思い出にされても困りますよ」
『どうして?怯えちゃったイヌ?みたいだった』
「悪口ですよ、もう...」
何時もの調子に戻ってきたのか、ズレた眼鏡の縁を指先で摘む。寄り掛かる私を拒もうとはしない彼に、此方も安心しているのを悟られないよう大きく笑う。呆れるような溜息を零された
彼のご機嫌が治ってきたところで、誰かの足音が近付いてきたのを察した。姿勢を改めて伸びをすると、ひょこ、っと今度はグリムさんを抱えたユウくんが扉から顔を覗かせた。ゴーストさん達が呼びに行ったのだろう。時計に目を向ければ、登校まで残り15分を切っていた。
『ユウくん、ありがとう』
「いえ、お気になさらず。紅茶、口に合いましたか?昨日とは違う葉だったんですけど」
『美味しかった。購買部で買ってるの?』
「そうですよ。あ、放課後行く予定です」
アズールは顔の火照りを無くしに洗面所へ向かったようだった。使用済みティーセットを当たり前のように洗い出した彼に話し掛ける
紅茶、というのは沢山の種類があるらしい。
質問を肯定され、目を輝かせてしまった私が『一緒に行きたいな』と口にした時、髪も整え終わったらしい怖いくらい変な笑顔のアズールが戻ってきた。ユウくんが怯えている。
「それでしたらラウンジから寄付致します」
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作者名：愛奈 | 作成日時：2021年1月2日 5時
