【twst】ゆっくり砂糖は溶けていく (ページ11)

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隣に立ってケースの中を覗き込んで、あぁ、と声を漏らした。

「.....それはシナモンだな。」

『シナモン?あの、お菓子に使う?』

「そうだ、同じものさ。」

『へぇ。色んな使い道がありますね

...甘いんでしょうか、シナモンのカレー。』

やっばり甘いものには意識が向くようだ。

ふふ、と瓶から視線を移して棚を見詰め上げる。俺に楽しそうにスパイスの色や風味について問い掛けてくるのも、中々悪くない。

その度に此方へ向く瞳には、自分だけが映っていて汚い独占欲が俺を覆った。

一通り説明し終われば律儀にも御礼の言葉をかけられ、数回頷いて、そろそろ店主が戻る頃か、とカウンターへ向かう

─────シナモンか。良いな。

こっそり何本か手に取ると、ふわりと砂糖とは違った丁度いい甘い香りが鼻に入り込む。

カレーが嫌いな彼奴もシフォンケーキ辺りだったら軽食にでもするだろう

密かに考えを巡らせ小袋を5つほど持った店主に差し出してみれば、意外そうな表情をされた。

....まぁ確かに、シナモンは買ったことがない

これぐらいの代表的なスパイスであれば、購買部に溢れるほどあるのに加え、自分は甘いカレーは作らないのだから。
悟られないように目を逸らしたはずが、口角をニヤリと上げられた。

「愛されてるねぇ、お嬢ちゃん」

「へぇ.....そう見えるか?」

「否定はしないんだな?微笑ましい」

「.........当分来ないかもな」

「そりゃあ困った。

────甘いカレーだったら南瓜だな」

肘を立てて呟く男に、余計なお世話だ、なんて言い返した俺に陽気に笑ってスティックを包んだ袋を渡すとヒラヒラ手を振った。

一応会釈をして先に入口で待っていた彼女の元へ行けば何故かニコニコとしている。これがもし先輩だったり同学年の奴だったりしたら気味悪いが...とか怪訝そうに見詰めてみたら、彼女は笑いながら口を開いた。

『仲が宜しいんですね』

「.......はぁ?誰と誰がだ。」

『えぇ?だって、カリム先輩とか、アーシェングロット先輩以外と喋るの、あまり見ないですから』

「カリムは良いとして、どうして其処でアズールが出てくるんだ。

何かと理由をつけては俺を.....」

ハッとして、言いかけた言葉を止め口を結んだ。

彼女に愚痴を話してどうする。
木製のドアを押し、店の中に外の空気を入れ込んだ。