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この家に引っ越してきた時にお母さんの遺品は全て引き出しに閉まった。父親のことを信頼していなかったし、何か言われたら嫌だなと思ったからだ。暮らしに慣れた頃には父親を信頼できるようになり、ネックレスと万年筆を小さな本棚の上に置くようになった。お母さんの仏壇はないから、やがてそこに話しかけてる習慣がついていた。
「ただいま、お母さん」
今日も学校から帰ってきて本棚の上にあるネックレスと万年筆に声をかけた。決して「お帰り」とは帰ってこないけど、言わないよりも寂しい気持ちが紛れるのだ。…今日は父親は帰ってこないみたいだから私がご飯の準備しなきゃな…そう思い急いで着替えて部屋を出る。
「わっ!なんだ、いたの?」
扉を開けるとちょうど父親も自室から出てきたところだった。
「あ、ああ。しばらく泊まり込みになりそうだから着替えを取りに来たところだよ」
「そうなの?警察って本当に大変そうだね…
お疲れ様。」
「ああ。もしかしたら四日くらい帰ってこれないから戸締りとかキチンとするんだぞ」
「はいはい」
「美桜、ハイは一回」
「…はーい」
私がダルそうに返事をすると、「行って来るよ」と言い残して家を出て行ってしまった。一人きりの家には慣れてるけどやっぱり少しだけ寂しい。

「ハロ、ご飯にしようか」
「アンッ!」
でも今はハロもいるからまだ寂しくないか!ご飯を作って席に着く。いつも父親が座っている席には交換日記が置いてあった。今日は何か書いてあるかな…?父親は意外にも律儀に帰って来た日は交換日記に返事を書いてくれた。かれこれ2週間は続いている。お行儀が悪いが、食事中に日記に手を伸ばし自分の手元に寄せた。
「………どれどれ?」
昨日の夜、書いたページをパラパラと開く。
『4月27日
今日は若菜と部活動見学に行ったよ。若菜はテニス部に入るらしい。私は弓道部か剣道部で迷ってるよ。どっちにしよう…』
こんな日常の一言みたいな日記にも父親は律儀に返事をしてくれた。
『俺は中学の頃はテニスやってたぞ。肩を壊して辞めたけどな…。その後柔道もやったけど、今になって思えばどちらも役に立つ場面はあったな。美桜が楽しそうでやりがいのありそうな方を選べばいいと思うぞ』
父親がテニスをやっていたことを初めて知った。まだ一緒に住み始めて1ヶ月だし当たり前か。今の父親からテニスしてる姿が想像できない。どちらかというと後述されている柔道の方が想像できるかも。
「よーし、いない間も書いてこう!」

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絵理奈(プロフ) - コナン(新一)、昴さんとか出さないのですか?コナンだと、まさかっ組織の残党!?って思考になって (2019年8月20日 9時) (レス) id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
桜山 もち丸(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます!文を大幅に変えた際に直させていただきました! (2019年5月8日 21時) (レス) id: b371b1aeb6 (このIDを非表示/違反報告)
闇病み(プロフ) - 30ページで泣いた。感動する。降谷さあ''あ''あ''ん頑張ってくださいいいい更新頑張ってください! (2019年5月8日 16時) (レス) id: edc146277d (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 3話の最後のページに誤字がありました。「勝っていた犬」ではなく、「飼っていた犬」です。 (2019年4月3日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桜山 もち丸 | 作成日時:2018年10月3日 22時

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