25話 ページ25
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小瀧「そんなふうに遊びまわってた俺らやったけど、Aはただ遊んでるだけの学生やなくてな」
徐々に視線が下に向いてしまっているのが自分でもわかる。
小瀧「プロのピアニスト、目指しててん。
俺と遊ぶのは息抜き、言うてた。普段は通信制の学校に通って、毎日毎日ずっとピアノの練習。
本人はそれが楽しいって、毎日が幸せやって言うてた」
「知らんかった」と口々に言うみんな。
Aの口から音楽の話が出てくることは全くないに等しいから、驚きだったのだと思う。
小瀧「…あの日は休日やった。
大きなコンクールを終えて、数日の休みができたから、今日は丸一日遊ぼう、言うて俺を誘ってくれたことがほんまに嬉しくて。浮かれててん、俺。
Aのことばっかり見てた。全然周り、見てなかってん。」
あの日のことを思い出すと、苦しい。
小瀧「交差点の信号待ち。トラックが俺たちの方へ突っ込んできた。
Aのことばっかり見ていた俺は全くそれに気づけへんまま、吹っ飛ばされた。
でもそれはトラックに跳ねられたわけじゃなくて、Aが俺を思いっきり引っ張ったから。
引っ張られたことで俺は吹っ飛んで、Aも俺も最悪の事態は免れた。せやけど打ちどころが悪かってん。俺は打撲程度で済んだけど、Aは頭を打った」
顔を上げると、全員が険しい顔をして俺のことを見つめていた。
小瀧「そんで………………左手に、麻痺が残った。」
もともと険しかったみんなの顔が、さらに険しくなって。
重岡「…指、動かれへんようになったんか」
ピアノを弾くしげならわかるだろう。
小瀧「…日常生活に支障はないし、ある程度なら動かせる。せやけど、ピアノを弾く時みたいに繊細に動かすことはできなくなって。
夢を諦めるしかなかったAが苦しむところを俺は見ていることしかできひんかった」
視界の片隅でしげが自分の左手の指を動かしながら見つめているのが見えた。
それが昔のAと重なって見えて。
小瀧「病院の先生もな、残酷やねん。�犧玄蠅世韻悩僂鵑任茲�ったですね�瓩辰董��猴�き手じゃなくてよかったですね�瓩辰董�
そうやねんけど、そうやねんけどな？…っ」
込み上げてきそうな涙をグッと堪えた。
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作者名：ひのりーる
| 作成日時：2020年7月26日 20時
