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“泊まって行きなよ”
その言葉に、目を見開く。
「えっ……いや、元々書類を渡し忘れた僕が悪い訳ですし、大丈夫ですー。センパイの親にも悪いですしー」
そう言うが、掴んだ手を離すことはなく、
「……親なら仕事でほとんど帰ってこないし、いないよ。これは委員長命令だ」
……権力の横暴だっ！！！
僕が風紀委員会に入ったあと、やたらこの“委員長命令”を使ってくる。普段ならなんやかんや聞いてあげてるけど、今回ばかりは……。
そう思い、腕をぐいぐいと軽く引っ張るが、離す気配はなく、逆に引っ張られて…って、え？ 気づけば、雲雀センパイの腕の中にいた。……横抱き、というやつである。
えええええええぇ！？！？！？
「ちょっ！？ 降ろしてくださいー！！ 誰か、ヘルプミー！！」
すたすたとそのまま廊下を歩いていく雲雀センパイ。
少し耳を赤くして叫びながらも手足をばたつかせ、必死で降りようとする。
って言うか雲雀センパイも濡れちゃうよ！？
「……うるさい、口塞がれたいの？」
不意に立ち止まり、そのまま顔を近づけてくる雲雀センパイ。
入学式の日のことを思いだし、顔が真っ赤になっているのが、自分でもわかる。
そのまま大人しくなったことにか、僕の真っ赤な顔を見て満足したのかわからないが、再び顔を離すと歩き始めた。
どこか大きな扉の前で立ち止まり、そのままそこから中に放り込まれる。
「いだっ」
あ、頭ぶつけたんだが。痛くはなかったけど。
「風邪引くから、風呂、入りなよ。着替えは用意させるから」
そういうと、僕の返事も聞かず、すたすたと行ってしまった。
「ハァ……」
思わずため息をついてしまうが、ここまで来たら諦めるしかない。
ここまでの道のりが複雑だったような気がするし、恥ずかしくてぼんやりと天井を眺めていたため、ここから抜け出せる気はしない。
ゆっくりと服を脱ぎ、僕はそのままお風呂に入った。
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作者名：夢うさぎ | 作成日時：2019年5月3日 19時
