好きにさせてやる【煉獄杏寿郎】

決心、そして卒業 ページ42

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「先生。私、私立も受けてみようと思う」


　二度目の二者面談で、私は先生にそう告げた。


「そうか、それはよかった！しかし急だな！」


　案の定、先生は目を丸くしながら、驚いたように大きな声を上げた。私は深呼吸をして、ほんの少し微笑む。


「成績は大分上がったけど、国公立は難しいと思う。だから、確実に受かりそうなところもチャレンジしたくて」
「うむ！いい心掛けだ！それで、どこの大学を受けるんだ？」
「ここです」


　そう言って、大学のパンフレットを机に置いた。
「む？女子大か」と目を見張って固まる先生に、私はおずおずと訊く。


「ダメ…ですか？以前オープンキャンパスに行ったときに、私立ならここがいいなと思ったんですけど」
「いや、ダメではない！むしろ女子大の方が俺は嬉しい！変な虫がつかないからな。ん、しかし……女子大の方がモテる可能性はあるな……」


　腕を組みながら、悩ましい表情を浮かべる先生。私は思わず「ふっ」と噴き出してしまった。


「む、笑い事ではない！これでも心配してるんだ」
「すいません、かわいいなって思って」
「かわっ…」


　顔を真っ赤にした先生を見て、またクスクスと笑ってしまった。
　先生はコホンと咳払いをして、「さて、話を戻すが──」と急に真面目なトーンで話し出した。


「Aの成績なら、おそらくここの大学の推薦は大丈夫だろう。出席日数も問題ない。あとは小論文と面接の対策をしっかりしないとな」
「え、推薦なんていいですよ。小論文苦手だし」
「なに、大丈夫だ！俺がしっかり添削してやろう！模擬面接もやるから、安心しなさい！」


　どーんと任せなさいと言わんばかりに、先生がワハハと笑い声を響かせる。
　あーこれはもう決定事項だなと、肩を窄めながら「お願いします」と小さく返事をした。


「君の受験が終わって、無事卒業したら──ひとつお願いがあるのだが……」


　面談が終わる頃、先生が私をまっすぐ見つめながらそう言った。


「なんですか？」
「"先生"ではなく、下の名前で呼んでほしい……いいだろうか」


　恥ずかしそうに言った先生を、きょとんとしながら見た。下の名前ってどう呼べばいいんだろう。杏寿郎？杏寿郎さん？

　心の中で迷っていると、「A？」と呼ばれてハッと我に返る。


「もちろん！ちなみに呼び捨てですか？」
「当たり前だ！」


　にこにこと満面の笑みを浮かべる先生に、「わかりました」と言って頬を緩めた。


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