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「おはよう!」


 背後からの大きな声。ビクッと肩を揺らした私の横で、美羽がくるりと後ろを振り向いた。


「煉獄先生、おはようございます!」
「……」


 無言で前を歩く私の背中に、
「ん、無視はいかんぞ!」と注意の声が飛ぶ。

 追いついた先生が私の腕を掴んで、ずいっと顔を近づけてきたものだから、思わず「わ」と言ってのけぞってしまった。

……だめだ。なんか色々思い出して、顔をまともに見れない。

 困ったように視線を落とすと、なぜか美羽の怒りの声が聞こえてきた。


「ずるい!先生、私にも同じように顔を近づけてください!私、先生のことが大好きなんですから!」


 先生は「む?それは嬉しいな!」と言いながら、私からスッと離れて、美羽の頭にポンと触れた。

 その光景を見た瞬間、急に胸の奥がざわりとした。


「先生!美羽に触れないで!なんか……嫌だ」


 咄嗟に先生の腕を掴んで、そう言ってしまった。
 

「……」


 先生と美羽が驚いた顔で私を見ている。
 私は急いで彼の腕からパッと手を離した。声を張り上げてしまったせいか、数名の生徒の視線が突き刺さり、一瞬、嫌な空気に包まれる。


「どうしたの?A……」


 美羽の心配そうな声が聞こえ、「ごめん、行こう」と歩を進めようとしたときだった。


「──今のは嫉妬、だろうか」


 さっきよりも強い力で私の腕を掴み、耳元で囁いた先生。吐息が耳にあたって温かい。その熱は、私の顔の温度までも上昇させていく。

 こんなときに、いじわるだ……。

 そう思って、思いっきり彼の腕を振り払った。


「違います!」
「すまない!ついからかいたくなってしまった」


 私の頭をそっと撫でながら、先生は口角を上げてにっこりと笑う。さらに顔が熱くなった気がして、私はその場から逃げるように美羽の手を引いて歩き出した。


 早足で靴箱まで行くと、私は怒りをぶつけるかのようにパンッと上履きを床に落とす。


「ねぇ、さっきなんて言われたの?いいなあ、耳元で」


 靴を脱ぎながら、美羽がそんなことを訊いてきた。
「羨ましい」と、口を尖らせて。


「……大したことじゃないから」


 視線を逸らし、彼女の目を見ずにそう答えた。

 美羽が鈍感な子で本当によかった……。

 心の中でホッとしながら、教室へと向かった。


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設定タグ:煉獄杏寿郎 , 鬼滅の刃 , ヤンデレ   
作品ジャンル:恋愛
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彩乃(yumeko)(プロフ) - 愁さん» 愁さん、こんにちは!コメントありがとうございます!最後まで最高でしたか(*´∀`*)初ヤンデレだったので、そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しいです(*´-`)次の話も今書いている途中ですので、是非またいらしてください(-´∀`-) (2021年5月14日 12時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - yumekoさん!お久しぶりです。やーっと読みに来れました(*^_^*)最後まで、最高のヤンデレでしたよー!!ありがとうございました!! (2021年5月14日 5時) (レス) id: 698f8cda36 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(yumeko)(プロフ) - 義勇と杏寿郎推しさん» わぁぁ、よもやよもやだ!杏寿郎からコメントいただけるとは(*´ω`*)ありがとうございます!凄かったですか!笑 次はね、またキョウジュロなんです(>_<)優しいキョウジュロなので、ヤンはひとまず休憩します(笑 また是非来てください(-´∀`-) (2021年5月8日 12時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
彩乃(yumeko)(プロフ) - 奏海さん» 奏海ちゃん!(>_<)コメントありがとう(-´∀`-)わぁ、そう言ってもらえてめちゃくちゃ嬉しい(*´-`)カッコ良すぎるだなんて(照)炭治郎はライバルにするとあかんね(笑 いい子過ぎて!次は宇髄さんも出るのでどうぞよろしくお願いします(^^♪ (2021年5月8日 12時) (レス) id: 555a9d3211 (このIDを非表示/違反報告)
義勇と杏寿郎推し - よもや!よもやだ!完結おめでとうだな!凄かったぞ!ヤンデレの俺か・・・・・・、うむ!次は冨岡の描いて欲しいと思っているが次のも楽しみにしてるぞ!最後に完結おめでとう!これからも心を燃やして責務を全うしてくれ!炎柱、煉獄杏寿郎でした!またな! (2021年5月8日 9時) (レス) id: 4609b567d2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:彩乃 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=yumereiao519  
作成日時:2021年3月17日 21時

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