好きにさせてやる【煉獄杏寿郎】

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「先生……」


　ギシッと軋むベッドの上。ゆっくりと体が沈んでいく。震えた手で先生の腕を掴むと、彼は優しく微笑んで私の髪を撫でた。


「大丈夫だ。怖くない。君は何も考えずに、俺に身を任せればいい」


　返事の代わりに笑って、私は彼の背中にそっと腕を回す。

　すぐに優しいキスが降ってきた。上唇や下唇にそっと触れて、すべてを包み込むような口付け。

　ほんの少し目を開ければ、先生も少しだけ目を開けていた。「ふふ」と笑ってしまった私に、彼は不規則に何度もキスを落としながら、インナーのキャミソールを鎖骨付近まで捲り上げた。

　恥ずかしさのあまり、くるりとうつ伏せになって先生に背を向けると、パチンと指先でホックを外されてしまった。

　胸を包んでいたものが、腕から強引に引き抜かれる。それは、ぱさりと小さな音を立てて、ベッドの下に落ちていった。


「こっちを向かないなら、このまま君を抱く」
「ちょっ……えっ？」


　背中に舌を這わせられ、体がぴくりと反応する。


「…っ… ん、……ぁ……」


　下から上に舐め上げられ、自然とイヤらしい声が出てしまう。そして、首筋、さらには耳まできた舌が、耳の輪郭をなぞりながらぬるりと中に入って、一段と変な声が出た。

　自分じゃないみたいで、すごく恥ずかしい。


「背中だけでなく、耳も弱いんだな……」


　吐息が耳にかかる。しばらく水音を響かせ、やがてかぷりと耳朶を食んだところで、先生は私の体を仰向けに戻した。
　力が抜けそうになった体は、いとも簡単に組み敷かれる。慌てて両腕で胸を隠すと、それは強い力で引き剥がされた。


「綺麗だ、すごく」


　燃えるような熱い視線を感じて、数瞬、心臓がうるさく音を立てる。

……もうダメだ。何も考えられない。

　固く瞼を閉じると、先生の甘い口付けが私の思考を再び奪っていった。




*



　
　初めてのそれは、猛烈な痛みだった。
　けれど、苦しみを感じるどころか、嬉しさで目に涙が滲んで、心がじんわりと温かくなった。

　初めて感じたのだ。

──ものすごく、幸せだと。

　愛する人と身も心もひとつに繋がることって、たぶん奇跡のように嬉しいことだ。

　目を閉じて、熱い身体をぴたりとくっつけたまま、深く、深く微睡む。


「──A、愛してる。君はもう俺のものだ……決して離しはしない」

　
　薄れていく意識の中、先生の囁く声が聞こえたような気がした。


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