10数えたら、【天童覚】 (ページ3)

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天童は本当によく笑う

試合中でさえ笑うのだから、その神経が理解し難い。

もっと弱いところも見せてほしい、

なんて思うのはやっぱりわがままなのだろうか

「ちょっと寄り道してかない？」

「おっ、いいですね」

だんだんと日も長くなってきたけれど、

さすがにこの時間帯になると辺りはすっかり暗闇に包まれている

迷わずいつもの公園に立ち寄って、ふたり並んでベンチに腰掛けた

「……ねむい…」

「ほんとはなにしてたの？」

「頭使って体動かして戦ってた」

「ゲームじゃん」

…心地良いな、なんてふと思う

この言葉の間も、返事をするタイミングも

お互いのペースをわかりきっているからこそ、安心して

どちらかが嫌と言ったことはやらない
どちらかの決めたことは、応援し合う

なにか約束したわけじゃないのに決まっていた、距離感

ふたりの間にちょうど良い間隔で空いた空間が

…私たちの関係みたいだと、いつもこっそり思っていた

「10秒待ってて」

「りょーかい」

ベンチから立ち上がった天童は、そのまま真っ直ぐ自販機へと向かう

少し離れた後ろ姿が、なんだかやけに小さく見えて遠く見えて

哀しさに似た別の感情が一瞬、心から顔を出す

慌てて追い払って、また視線を戻せば

私の視線に気づいた天童が振り向いて

暗くてよく見えないないけれど、目が合ったんだと気づく

そっと手を振れば、嬉しそうに応えてくれた

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